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『町田くんの世界』安藤ゆき×石井裕也。異才の掛け合わせで飛躍した映画

(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

『町田くんの世界』安藤ゆき×石井裕也。異才の掛け合わせで飛躍した映画

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“普通の恋愛”を描かない天才監督・石井裕也



 映画化の企画が動き出し、監督に起用されたのは、28歳での商業映画デビュー作『 川の底からこんにちは』(10)がいきなりベルリン国際映画祭の招待作品になるという快挙を成し遂げた石井裕也。以降も、三浦しをんの小説を映画化した『 舟を編む』(13)、戦前のカナダに実在した日系人野球チームを描いた『 バンクーバーの朝日』(14)など、内外の映画祭や映画賞で高く評価される作品を送り出している。


 現在35歳で早くも日本を代表する監督の一人になった石井だが、自主制作の時期に撮った作品で描いた男女関係で特徴的なのは、不器用な生と性、ディスコミュニケーション、諦念。それに暴力的な要素が加わることもある。『 反逆次郎の恋』(06)のDVDに収録された映像特典「トークショー 石井裕也、恋愛を語る」では、恋愛は「不毛なサイクル」であり「資本主義社会の潤滑油」であるといった、かなり冷めた恋愛観を披露している。


 最果タヒによる詩集から石井監督が脚本を書き起こした『 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)は、珍しく恋愛を主軸に据えているものの、生きづらさを抱えた男女が出会う物語であり、そこには死の気配が漂う。



『町田くんの世界』(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会


 つまり、少女漫画の定番である「健全な若者が恋をし、悩みや困難を乗り越えて結ばれる」といった定番のラブストーリーとは、かけ離れた物語を紡いできたのが石井監督だった。「町田くんの世界」が型破りな少女漫画だったからこそ、挑戦のしがいを感じ、映画化を引き受けたのだろう。



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