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SFエンターテインメント大作『エリジウム』が痛烈に描き出す、現実世界が抱える問題とは

SFエンターテインメント大作『エリジウム』が痛烈に描き出す、現実世界が抱える問題とは


社会風刺をテーマに掲げた異色の注目作



 監督ニール・ブロムカンプの長編デビューを飾った『第9地区』は、現在も色あせることなく、いまなお映画ファンの間では語られる機会が多い。なぜなら『第9地区』で描かれた差別と格差は、現代で再び表面化しているからだ。


 監督は、実社会の問題提起をさまざまな描法を用いて映し出しているが、本作『エリジウム』における格差社会の実態は、これまで以上に平易に描き出されている。『第9地区』では人々の無意識な差別行動が主軸に置かれていたが、『エリジウム』では経済格差に困窮する貧困層と、悠々自適な暮らしを営む富裕層との格差、それに付随する理不尽への追究が見て取れるだろう。




 極度の環境破壊による影響で、地球はひん死の状態だった。富裕層はこの汚染された地球を捨て去り、円形型のスペース・コロニー居住地“エリジウム”に移住。緑が生い茂るコロニー内部で、富裕層は自分の思うままに生活を送る。地球に残る貧困層は、衛星軌道上に浮かぶエリジウムに向かうすべを持っていない。劣悪な環境と化した地球で、毎日を苦しく生きるしかないのだ。おまけにエリジウムでは、高度に発達した医療技術が確立されている。軽度の骨折から重度の白血病、果てには高濃度の放射線汚染まで、あらゆる病気を完治することが可能となっている。


 万人に行き渡るべきである医療までもが、エリジウム特権で独占されている始末だ。余談だが、わたしたち日本人は、本作でいうところのエリジウム市民と同等の待遇を受けていることを忘れてはいけない。さて、主人公のマックス・ダ・コスタ(マット・デイモン)をはじめ貧困層の人々は、この高度な医療技術を求めて、地球の衛星軌道上に浮かぶ理想郷エリジウムを目指すわけだが、これは現在の国際問題として認識されつつある、不法移民を暗喩した描写ともとれる。




 地球に拠点を置く地下組織は、小型艇に乗って頭上のエリジウムを目指す。小型艇はエリジウムからの攻撃を避け、コロニー内部に不時着するも、エリジウム当局の取り締まりによって、地球に強制送還されてしまう。まさに現実での密入国を連想させる場面だ。理想郷を求めた密入国は、アメリカとメキシコの国境における不法移民を想起させるし、アメリカはこの国境に壁を建造しようともしている。まさにこの映画は現在のアメリカとメキシコの関係性を予見し、格差の実態をサイエンス・フィクションとして展開させているのだ。



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