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『第9地区』完全CGでないから実現できた!?“エビ型”宇宙人のリアルな感情表現の秘密とは?
『第9地区』あらすじ
南アフリカのヨハネスブルグ上空に突如現れた巨大宇宙船。コンタクトを取った地球人が見たものは衰弱しきったエイリアンたちだった。。仕方なく彼らを「難民」として受け入れるのだが、難民キャンプの「第9地区」はもはやスラム化し地域住民の不満は限界に達してしまう。。そこでMNUと呼ばれる超国家機関は、エイリアンたちを新たな難民キャンプ「第10地区」へ強制移住させることを決定。プロジェクトの最高責任者であるエイリアン対策課のヴィカスは、早速準備に取り掛かかる。その後、強制移住の通達で訪れたエイリアンの家で謎の液体を浴びてしまうヴィカスは、原因不明の体調不良に悩まされ倒れてしまう。目をさますと何と自分の手がエイリアンの手に変態してきているヴィカス。事態を重く見たMNUはヴィカスを確保。嫌がるヴィカスをよそに様々な人体実験を施していく。生命の危険を感じたヴィカスはMNUを脱走し皮肉にも第9地区に逃げ込んでいくのだが。。
Index
アナログな要素の融合によって生じるリアルな映像世界
『第9地区』の大きな魅力は、誰もが「あっ!」と驚くVFXやCG映像を加味しながらも、一方でどこかアナログ感の漂うリアルな感触を炸裂させているところにある。
あえて手持ちカメラの粗い画像を多用することでドキュメンタリータッチの生々しさが加味され、また随所にこの映画のために撮られたものではない全く別の記録映像を挿入することで、目の前で起こっている映像世界がどこか現実社会と密接にリンクしているようなザワザワ感を引き起こす。これらが相まって突きつけられることで、目の前に浮かぶ巨大な宇宙船も、スラム街で“エビ”のような宇宙人が残飯をかき集めたりする様子なども、全くの絵空事とは到底思えなくなってしまうのである。
いうまでもなく、舞台となった南アフリカ自体、アパルトヘイトという負の歴史を持っていて、そこから醸し出されるリアルな香りは今なお拭いがたいものがある。そして冒頭で映し出される記録映像は、「(政情の不安定な)ジンバブエやナイジェリアから南アフリカへと流入してきた難民についてどう思うか?」と問われた住民たちのリアルな回答。また難民や移民に職を奪われることへの不安から大規模な暴動へと発展した様子なども克明に盛り込まれている。これらを「宇宙人に対する住民たちの反応」としてあえて代用して見せることで、本作は“フィクション”の中に何かしら“作り物ではない現実感”を内包することに成功しているのだ。