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鬼才ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』が描く、超過激な向こう側の世界※注!ネタバレ含みます。
2019.06.19
※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
※2019年6月記事掲載時の情報です。
『ハウス・ジャック・ビルト』あらすじ
1970年代の米ワシントン州。建築家になる夢を持つハンサムな独身の技師ジャックはあるきっかけからアートを創作するかのように殺人に没頭する・・・。彼の5つのエピソードを通じて明かされる、 “ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラー12年間の軌跡。
Index
世界震撼。鬼才監督が綴る衝撃の問題作
ラース・フォン・トリアーの映画に「賛否両論」という触れ込みはつきものだが、今回ばかりはそのレベルの言葉では収まりそうにない。何しろカンヌ映画祭でのお披露目では、大勢の観客が途中退場してしまい、一方、最後まで残った観客からは6分間にわたるスタンディング・オベーションが起きたというのだ。まさに嫌悪と熱狂。これら両極化した二つの感情の渦はどこまでいっても相容れることはないだろうから、今回ばかりは私も「ぜひ観て!」というのは控えることにしている。もしもそれでも観たいというなら、まず心臓を5回叩いて、メンタルに余裕があるか否かを自分に問い、なおかつご自分の年齢が18歳以上かどうかを確認した上でぜひ心して臨んでほしい(本作は映倫レイティング「R18+」である)。
さて、その気になる内容はというと……端的に言えば“シリアルキラー”の物語である。12年という歳月の中で主人公ジャック(マット・ディロン)が手を染める事件は数知れず。その中から5つをピックアップして、狂気の犯行に関するおぞましい描写と、ほのかなブラックユーモアと、「ん?なんだこりゃ?」と首を傾げたくなるほどの奇妙奇天烈な“対話”を織り交ぜていく。
『ハウス・ジャック・ビルト』予告
口を開くと「俺の殺人はいわばアートだ」という異常な論理を振りかざすジャック。そこにグレン・グールドのピアノ演奏風景、デヴィッド・ボウイの「フェイム」、数々の歴史上の記録映像、そしてトリアー監督の過去作の名場面さえもが挟み込まれ、映画はますますもって先の読めない異様な雰囲気を加速させてやまない。