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クラシック・ホラー『チャイルド・プレイ』斬新なアイデアとチャッキー誕生の秘密

(c)1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

クラシック・ホラー『チャイルド・プレイ』斬新なアイデアとチャッキー誕生の秘密

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脚本家ドン・マンシーニの最初の脚本とは



 “湖畔の絞殺魔”の異名をとる連続殺人鬼チャールズ・リー・レイ(ブラッド・ドゥーリフ)。オカルト分野に傾倒したチャールズは、死の間際に呪術を用いて、玩具店にあった子ども向け人気商品“グッドガイ”人形に自分の魂を移す。恐ろしい絞殺魔は絶命したものの、かれの凶悪な精神はグッドガイ人形に憑依していた。それを知らず購入した母子世帯のシングルマザー、カレン・バークレー(キャサリン・ヒックス)は、絞殺魔の魂が宿る人形を息子アンディ(アレックス・ヴィンセント)の誕生日に贈る。


 グッドガイ人形はどれも見た目が同じだが、それぞれに唯一無二の名前が付けられていた。アンディ少年が手にした人形は自らを“チャッキー”と呼んだ。友達のいないアンディにとってチャッキーは親友のような存在になっていく。これが悪夢の始まりだとは知らずに……。と、大方の物語はざっとこんなものだが、じつは初期段階の脚本では殺人鬼の登場もなければ、怪しげな呪術の要素もなかった。



『チャイルド・プレイ』(c)1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.


 1985年、脚本家ドン・マンシーニは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)在学中に『チャイルド・プレイ』の初稿を書き上げた。ドン・マンシーニの最初の脚本では「ブラッド・バディ(Blood Buddy)」というタイトルで、元々の脚本に登場する人形は、殺人鬼の魂ではなく少年自身の魂を宿したものだった。少年が抱く腹立たしさ、苛立ちなどストレスの意識を感じ取った人形は、少年のストレスの原因となる人物に襲いかかるという内容だ。


 初稿での人形には人工血液が流れており、乱暴に扱うとゴムの皮膚がやぶれて血がしたたる。止血の手当てが必要になる。治療には別売りの応急処置セットが必要だそうで、ドン・マンシーニいわく最初の脚本では「子ども向け商品への皮肉を描く作品が書きたかった」そうだ。


 兄弟の証として、少年はお互いの指を切って、人形と血を交わらせる。この“血の儀式”によって、少年の意識が人形に宿りだす。では、この脚本にだれが手を入れたのかというと、これが複雑で、当初『チャイルド・プレイ』の監督として白羽の矢が立ったのは、『W/ダブル』(87)のジョセフ・ルーベン監督だった。同監督の元で脚本家ジョン・ラフィアが練り直すものの、ルーベンはのちに監督を辞退。最終的にメガホンを取ることとなった監督トム・ホランドが最終的な脚色を施した。



『チャイルド・プレイ』(c)1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.


 元の脚本と大きく異なる点として、殺人鬼チャールズ・リー・レイの登場と、ブードゥ教の呪術などオカルト的演出があるが、これらは監督トム・ホランドの加筆によるものだ。こうして現在のよく知られる『チャイルド・プレイ』の原型が完成した。余談だが共同脚本のジョン・ラフィアは続く『チャイルド・プレイ2』(90)を監督し、原案のドン・マンシーニは『チャイルド・プレイ/チャッキーの種』(04)以降の続編3本を監督している。



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