(c) 2019 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
ブルース・リーからの福音書『燃えよドラゴン』の「考えるな!感じろ!」とは?
『燃えよドラゴン』もっとも有名な言葉
『燃えよドラゴン』製作の紆余曲折は、多くある研究書やオーディオコメンタリーなどに詳しいので、そちらを参照されたい。一応、大雑把に記しておくと、『燃えよ!カンフー』(73)や『サイレント・フルート』(77)の企画を取り上げ、門前払いし続けたワーナー・ブラザーズは、ブルースがアジアで大スターになったことで手のひらを返す。ハリウッド作としては大きなバジェットでは無い事もあり、ほぼ全権をブルースに任せて作ったのが『燃えよドラゴン』である。
そのため、多くの場面でブルースの意向がブルースの思った通りの形で撮影された。普通ならプロデューサー判断なりでカットされるような、難解な禅問答のような言葉も、そのまま残された。その、残された言葉の中でも一番有名なのが「考えるな! 感じろ!」であろう。
『燃えよドラゴン』(c) 2019 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
少林寺の庭で少年に稽古をつけるブルース。何度も蹴りのダメ出しをするが、ようやくブルースを納得させる一発が繰り出される。その感覚を少年に問うと、どう答えて良いのかも含め「ちょっと考えさせてください……」と躊躇する。その瞬間に出てくるのが「考えるな! 感じろ!」である。
そしてこう続く「それは月を指す指のようなものだ。指に気を取られていたら、その先の栄光は掴めないぞ!」
一見すると「考えるのを止めて、物事を感じ取れ」といった即興性:インプロビゼーションの推奨に思える。しかし、この言葉には多くの背景や情景があり、それらを知らずには真の意味には到達出来ないのである。
指と月
後半部分、指と月にまつわるくだりは、鎌倉仏教のひとつ「曹洞宗」を日本で広めた禅師「道元(どうげん)」の言葉が元ネタだと言われている(おそらく、中国で学んだであろう荘子がさらに元。)。
修行者が、とある本について教えて欲しいと道元に聞いたところ「私は文字が読めないので、その本を読んで聞かせて欲しい。」と頼んだ。「文字が読めないのに、意味が解るのか?」と修行者が聞き返したところ、道元はこう返答したそうだ。
「真実と言葉には何の関係も無い。真実が月だとするなら、言葉は指だ。指は月の位置を指し示すことは出来るが、指にこだわっていると月は見えない。」
『燃えよドラゴン』の言葉に合わせるなら「考えにこだわっていると、感じることが出来なくなってしまう。」といったニュアンスになるだろう。では「考えずに感じる」とはどういう心境であろうか?