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ブルース・リーからの福音書『燃えよドラゴン』の「考えるな!感じろ!」とは?
お茶は楽しめましたか?
「わたしのお茶を味わっていただくために、あなたのカップを空にしていただかなくてはいけません。」これは、ある禅僧と研究者のやりとりが元になった、ブルース・リーお気に入りの言葉である。
とある高名な禅僧を取材する研究者。話を聞いている最中に「それは私の研究でも実践している」などと、いちいち話の腰を折ったそうだ。そして何度目かの“腰折り”に、とうとう禅僧は話を止めてお茶を振る舞った。
茶碗にお茶を注ぎ、ほどほどまで満たされ、それでもまだ禅僧はお茶を注ぐのを止めない。「もう、お茶は充分入ってます。」そう言ってもまだ注ぎ続けた。もはや、お茶は溢れんばかりに注がれている。「もう、それ以上お茶は入りません!」「その通り。私のお茶を味わうには、まず自分の茶碗を空にしなければいけない。」
ブルース・リーがこの世からいなくなった時、様々な人が追悼の意を発表した。その追悼の中で、交友のあった有名人の多くが、一様に「ブルースとは何時間も語り合った」と回顧している。
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何事においても勉強熱心なブルースは、どんな分野でも汲めども尽きせぬ話題をもてあまし、話し相手とみるや淀みなく話を続けたのであろう。なんとかブルースに自分の話を聞いて欲しくて口を挟んでみた人は、この話をされたに違いない。まったくもって羨ましい限りである。
残念ながら、現存するもの以外には「ブルース・リーの言葉」は増えない。しかし、今でもまだ、ブルースの用意した“お茶”は尽きていない。私たちはブルースのお茶を味わうために、まだまだ自分のカップを空にし続けなければいけないのだ。
心を空っぽにして、どんな形態も形も捨てて、水になるんだ。友よ。
参考文献
「ブルース・リー・メモリアル」(キネマ旬報社)
「ブルース・リー」 (ちくま文庫)
文: 侍功夫
本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。
『燃えよドラゴン』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVDディレクターズカット特別版 ¥1,429 +税
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