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『トゥルーライズ』シュワルツェネッガー&キャメロン、T2コンビが確立した「戦い」と「笑い」の黄金比
後続作品に受け継がれたアクションとコメディ
『トゥルーライズ』が愛される理由。それはここまで述べてきたような「遊び」と「真剣」が、高純度でせめぎ合っているからだろう。本稿の締めくくりとして、本作のアクションとコメディについて、少し考察したい。
まずはアクションについて。『007』のオマージュも含まれているとはいえ、本作が提示したアクションシーンの多彩さは、観客にも映画人にも多くの示唆を与えた。
乗馬アクションは『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)に受け継がれたと見ることができ、テロリストがビルの屋上から隣のビルのプールにダイブするシーンは、『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』(01)と同じ。敵をミサイルで吹き飛ばす展開は『ザ・ロック』(96)に通じるともいえ、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)のトイレでの戦闘シーンを観て、本作を思い出した方も多いだろう。『キャプテン・マーベル』(19)では、主人公がレンタルビデオ店で本作のポップを殴るシーンが描かれている。
『ジョン・ウィック:パラベラム』予告
上記の映画たちが『トゥルーライズ』に影響を受けたかどうかは定かではないが、少なくとも観客の脳裏には、強く刻みつけられたはずだ。前述の戦闘機の一大スペクタクルシーンも然り、キャメロン監督らしいダイナミックなアクションは本作でますます進化し、続く『タイタニック』へと繋がっていった。
コメディの面においても、本作が果たした意義は大きい。リメイクではあるものの、スパイというカッコよさの代名詞に、タバコを吸うとむせる、怒りで双眼鏡が割れる、家ではさえない父、といった2.5枚目なキャラクターの要素を加えたことで新たなイメージを与え、表現の幅を拡大。本作に顕著なアクションとコメディのバランス感覚は、設定に類似点も多い『Mr.&Mrs. スミス』(05)など、後続のアクションコメディのお手本となったことだろう。
シュワちゃんのキャリアにおいても、本作、『ジュニア』(94)、『ジングル・オール・ザ・ウェイ』(96)は彼のコメディ路線進出に大きく寄与し、新たなファン層を獲得。『ターミネーター』からのイメージ脱却に苦しまずに済んだのは、本作の存在も大きいはずだ。
…とここまで長々と書いてきたが、本作の魅力はやはり「面白い!」、その一言に尽きる。優れたエンタメは時代を経ても古びることなく、次世代のファンを増やし続けていくものだ。『トゥルーライズ』は間違いなくその系譜に連なる一作であり、5年後も10年後も、変わらずその時代の人々の心をつかんでいくのだろう。この映画に、賞味期限は存在しない。
文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema」
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