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狂気はジョーカーだけではない!ゴッサム・シティ犯罪者ガイド【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.32】

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トゥーフェイス / ミスター・フリーズ



 ゴッサム・シティに蔓延る悪は無数にあり、その姿形も様々である。バットマンの前に立ちはだかり、隙あらばぼくたちの道徳観や倫理観を揺るがせてくる悪党=ヴィランはジョーカーだけではないのだ。映画にも登場する代表的な悪役から、コミックのコマの中で異様な存在感を放つ奇妙な犯罪者たちまで、個人的な好みによる顔ぶれにはなるけれど、紹介してみたいと思う。


・トゥーフェイス

 とは言え最初は有名どころから。顔の半分が焼けただれた怪人トゥーフェイスは、ジョーカーと並ぶ重要な悪役だろう。きっかり半分が焼けただれた顔と左右でデザインの違うスーツという姿は、視覚的にもおもしろい。かつてはバットマンや警察のゴードン警視とともに、ゴッサムからマフィアを一掃しようと努める地方検事ハーヴェイ(ハーヴィー)・デントという人物だったが、マフィアの報復により顔に硫酸をかけられひどい火傷を負ったことで悪へと覚醒する。負傷のショックにより父親から受けた虐待のトラウマが蘇り、抑圧されてきた暴力性が解き放たれたとき、正義に燃える男デントは邪悪な第二の顔を持つ怪人になるのだった。


 映画ではすでに何度も登場している代表的な悪役である。『バットマン』ではビリー・D・ウィリアムズが検事時代のデントに扮しており、『バットマン フォーエバー』ではすでに怪人と化したトゥーフェイスをトミー・リー・ジョーンズが怪演。『ダークナイト』ではマフィアとジョーカーの罠により顔の片側と恋人を失った悲劇の人として描かれ、アーロン・エッカートが悪に堕落していくデントを演じた。このCGで表現されたトゥーフェイスの顔はもはや火傷では済まないレベル。焦げた肉の張り付いた骸骨が露出したような具合で、瞼を無くして剥き出しになった眼球の恐ろしいこと。かのヒース・レジャーによるジョーカーにひけを取らないインパクトのあるキャラクターになった。


 その成り立ちから二重人格や二面性につながりが強く、重要な決断はコイントスで行うのが特徴。使われるコインは両面が表になっているいわゆるエラーコインで、検事時代には常に表の出る幸運のコインとされていたが、トゥーフェイス化の際にコインの片面も焼け焦げたことで(バージョンによっては傷の場合も)初めて「裏面」が生まれたのだった。端正な顔つきながらその片側が醜く変形し、光に満ち溢れていた精神にそうでない面が生じてしまったトゥーフェイスを象徴するアイテムである。この悪役の魅力は、まだ善人だった頃の姿が半分でも見た目に残っているところではないだろうか。左右の姿が違えば違うほど、不安定さが際立ってくる。


・ミスター・フリーズ

 低温学者ヴィクター・フライスは不治の病に侵された妻を冷凍保存して治療法を探していたが、実験中の事故により自らも身体を低温に保たなければならない体質に変容してしまい、冷凍スーツの着用を余儀なくされる。さらにそこに凍結レーザー銃を装備し、妻の治療資金の調達のため強盗に手を染めるようになる、というのがミスター・フリーズのおおまかなバック・グラウンド。ゴッサムの犯罪者たち特有の悲劇的な背景の一例である。


 冷たい身体に冷たい心、ちらちらと舞う粉雪の似合う悲しげなスノードームのような雰囲気の怪人だが、映画では『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じた印象が強いだろう。高笑いをしながら冷凍レーザーを乱射し、寒いギャグを連発するというキャラクターだが、一応奥さんのことや不遇な身の上も説明され、妻を殺したのはバットマンだと騙されて利用されてしまうという面も。シルバーブルーに塗られたスキンヘッドのシュワルツェネッガーが眩く発光する冷凍スーツを着た姿は、これはこれで忘れられないヴィジュアルになった。ちなみに60年代TVシリーズでは3人の俳優が演じており、映画監督オットー・プレミンジャーもそのひとりである。



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