ピーウィーのプレイハウス
とは言え、ぼくが初めてピーウィーを知ったのはティム・バートンの映画ではなく、映画公開の翌年1986年から放送が開始された子ども番組「ピーウィーのプレイハウス」のVHSを観たのがきっかけだった。映画に登場する家をさらにスケールアップさせたまさにおもちゃそのもののような家で、しゃべる家具やパペットたちと暮らすピーウィーのもとに友達が訪ねてきて遊ぶというスタイルで、途中カートゥーンやクレイアニメといったミニコーナーも入る大変濃密な番組である。原語版のVHSで観ていたが、その強烈なヴィジュアル世界は言葉がわからなくとも夢中になれるほど魅力的で、少なくとも「セサミストリート」にあるような教養とは全く無縁のめちゃくちゃな内容だということは子ども心にもよくわかった。
プレイハウスでは椅子や窓枠、地球儀、テレビ、床の一部とあらゆるものがキャラクターとなっており、水槽の魚やアリ、翼竜、壁の巣穴の中に住む小さな恐竜の家族と生き物たちも楽しいが、特におもしろいのはロボットのコンキーである。タイプライターとトースターが組み合わさった頭から突き出しているのはストロボの眼、胸部はラジカセ、胴体はターンテーブルといった具合に様々な家電が組み合わされて出来ており、工作好きな子ども心を掴んで離さなかった。日用品で出来たロボットはそんなはずもないのに実際に作れそうな気さえ起こさせ、それが親しみやすさに通じていたと思う。このコンキーが毎回出力してくれるカードに書かれているのが「秘密の言葉」である。その回で誰かがそれを口にするとプレイハウス中の皆が騒ぐ。騒ぐだけで他には何もないのがでたらめな感じでいい。秘密の言葉と言いながらも書かれているのは「Okay」とか「There」とか「Look」とか、日常会話で登場頻度の高いものばかりなので、当然何度も騒ぐことになる。
作りが大味のおもちゃや色が強くて砂糖の多いお菓子。そんなアメリカ的な子どもの世界をぎゅっと凝縮したようなプレイハウスにあって、子どものようなピーウィーのキャラクターはよく際立つ。陽気で明るく人気者ではあるが、気分屋でわがまま、欲張りで飽きっぽいのもまた確か。繊細で傷つきやすくもあり、落ち込んだりするくだりもなかなか多く、同じくらい意地悪なときもある。子どもっぽいというか、子どもそのものである。大人になったらあんな家に、せめて部屋に住みたいと思ったが、部屋中におもちゃを飾ったりカラフルなものを好むのも、全てはこのプレイハウスの影響かもしれない。いつかは目と口のついた椅子を置きたいものである。