ピーウィーのプレイハウス:クリスマス スペシャル
そんな「ピーウィーのプレイハウス」、今ではNETFLIXで視聴できる。何度も繰り返し観た覚えのあるエピソードも、初めて字幕付きで観ると懐かしいのと同時に新鮮でもあり、不思議な感覚だった。なにを言っているのかがわかってしまうと、わけのわからなさが少し軽くなってしまった気もするけれど、とにかくもう一度見返せて楽しい。忘れかけていたもの、とか言うのは恥ずかしいし特に忘れているものはないつもりだが、ああこういうのが好きだったなあと改めて思った。
「クリスマス スペシャル」もお気に入りのエピソードだった。クリスマス仕様に飾り付けられたプレイハウスに、いつものお友達に加えてゲストのスターたちがやってきて定番クリスマスソングを次々披露してくれるという豪華な回である。特にグレイス・ジョーンズの「リトル・ドラマー・ボーイ」が印象に残っている。ホワイトハウス宛の大きな木箱が間違ってプレイハウスに届き、中からグレイス・ジョーンズが登場するというのもインパクトがあったが、初めて聴いた「パ・ラパパンパン」のフレーズも耳に残った。
ピーウィーの大人気なさも炸裂する。彼がコンキーに口述筆記させたサンタ宛の欲しい物リストはとても長く、印刷しただけでコンキーがショートを起こすほど。暖炉にかける靴下も大人がひとり入れるくらい巨大なもので、しかも左右両方ある。すでに持っているおもちゃを確認するために壁の中に隠された秘密のコレクション棚を確認するシーンもわくわくする。プレイハウスに招待して欲しいと電話してきたウーピー・ゴールドバーグに消極的な返答をしたり、1000枚のクリスマスカードの準備をフランキー・アヴァロンとアネット・ファニセロに押しつけて自分は雪の降ってきた外に遊びに行くなど、特別ゲストに対してもいつものピーウィー節なのだが、とにかくいつも以上のハイテンション。ポール・ルーベンス自身はユダヤ系だということはとりあえず置いておこう。それどころか他の登場人物からハヌカのことを教えてもらうくだりがあったりする。ちなみにこの回での秘密の言葉は「Year」。当然何度も発せられる言葉である。
ついにサンタ・クロースその人がプレイハウスに現れ、ピーウィーは山盛りのすごい色のクッキーとミルク(家にやってきたサンタへの差し入れとしてクッキーとミルクを出しておくのは一種のならわしである)で歓迎するが、問題がひとつ。ピーウィーにあげるプレゼントが多すぎて他の子どもたちにあげるものが無くなってしまうのだという。それを聞いても特に心の動かない様子のピーウィーだが、渋々ながら聞き入れる。全然納得いってなさそうなのがピーウィーらしい。その代わりサンタの助手としてソリに乗ってプレゼント配りの手伝いをさせてもらってめでたしめでたしという締めくくりだ。これがアメリカのクリスマスかあなんて思うのは早急だが、ポップなクリスマスのイメージを教えてくれたエピソードだった。
NETFLIXではオリジナルの映画『ピーウィーのビッグ・ホリデー』も配信されており、最近のピーウィーの姿を見ることができる。あまり年を取った印象がないのがまたピーウィーらしい。
イラスト・文:川原瑞丸
1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。