対話を重ねて、アニメーターの個性を引き出す
八代:ウィルさんはアードマンの他の作品でリードアニメーターをされていましたが、アニメーターから監督になる経験は、30人ものアニメーターと一緒にやって行く上で良かったりするんでしょうか。
ウィル:僕がアニメーターというバックグラウンドを持っていることが、役立っていたかどうかは…、、彼らに聞いてもらわないとわからないですね(笑)
僕は物語を作るのが大好きで、もともと短編を手がけていました。映像でストーリーを作る過程が大好きだったんです。
ショーンのテレビシリーズのシーズン5で、初めてアニメーターのチームを率いて監督することができたんですけど、アニメーターにはみんなそれぞれのスタイルがある。演出する時には、アニメーターひとりひとりが違うものを必要としていると気づきました。だから、コミュニケーションが何よりも大切なんだと。そうじゃないとアニメーターの一番良いところを引き出すことができないんです。
ただ、最初ちょっと問題だったのは、アニメーターだったからこそ、このカットはちょっと難しいな、とか事前にわかってしまうんですね。これ難しいのに頼んでしまっているなあ、っと、心配になるんです。
でもクランクインから一ヶ月くらい経った時には、もうその思いは捨てました。だって、スタッフはどんなに難しくても、何とか方法を見つけてくれる方たちばかりなので。いったんそういう心配を捨てると、解放感を感じましたね。
動いた!その瞬間のワクワクはずっと変わらない
八代:それだけ準備を重ねても、実際アニメートをしたものを見て、やっぱりなんか違う、撮り直そう、ということはあるんですか?
ウィル:もちろんそれはありますね(笑)
八代:やっぱり。安心しました(笑)
ウィル:そうなってしまった時、まずは、撮る前に僕が求めているものをちゃんとアニメーターに正確に説明したかどうか自問します。
すごく心情が難しかったり、複雑なジョークを成立させたいシーンでは、いちばん信頼のおけるアニメーターに頼みました。でも稀にではありますが、最高のアニメーターたちだとしても、求めているものを押さえてもらえないことはあり、リテイクをお願いしました。でもご存知の通り、全部やり直しになってしまうからなるべく避けたいんですけどね。
八代:根本的にはね、アニメーターもみんなそれぞれ考えがある人ですからね。
ウィル:だからある意味、役者さんを配役するのと同じように、スタッフをキャスティングするんです。このアニメーターをこの部分に、とか。ごんでは、アニメーターはチームで何人かいるのですか?
八代:アニメーターは4人いますが、主要なキャラクターはほとんど僕が動かしてます。そういう意味ではリテイクする時の心の負担は少ないですね。失敗は全部自分に返ってくるので(笑)でもその他のところーー美術とかでは、監督として伝える作業の難しさは感じます。
ウィル:そうですよね。でもスタッフが、僕らが求めていたものをさらに超えてくれた瞬間というのもたくさんあるんです。
八代:それはありますよね!
ウィル:まさにマジックーー魔法ですよね。数週間アニメーターに任せて、出来上がったものを初めて見る時は、いつもワクワクしますね。
八代:再生して動いた時のワクワクはいつまで経っても楽しいですよね。