『ひつじのショーン』はイギリスの老舗アニメーションスタジオ、アードマン・アニメーションズの代表作のひとつ。日本でもテレビシリーズ放映の影響を受けて、非常に人気の高い作品である。
全世界で大ヒットした『映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』に続く長編第2弾『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』の公開に先立ち、共同監督を務めたウィル・ベチャー氏が来日。ストップモーションアニメのクリエイター同士として、『ノーマン・ザ・スノーマン』シリーズ、『ごん GON,THE LITTLE FOX』の八代健志監督(TECARAT所属)との対談が実現した。
二人にしか話せないストップモーションのディープな魅力、制作の裏話などをたっぷりとお送りする。
TECARATスタジオを見学するウィル監督。八代監督が作った木彫り人形に感心しきり。
国は違えど、同じストップモーションアニメを作る者同士。ウィル監督は「アードマンと似た雰囲気がある。故郷に帰ってきたようです。」と微笑んだ。
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セリフがないショーンの世界。その演出法は?
Q:まずは『映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!』『ごん GON,THE LITTLE FOX』それぞれの作品の感想をお聞かせください。
八代:ではまずは僕から。短い時間に楽しいことや面白いことがどんどんどんどん積み重なって、すごく隙間なく楽しめました。アニメーションの醍醐味が1時間以上も続けられるってことが素晴らしいなと思います。
ウィル:アリガトウ(日本語)。八代監督の『ごん』を拝見して、本当に美しい作品だと思いました。映像から肌触りや質感、美しい色味、そしてキャラクターのパトス(エモーション、感情)を感じました。アートディレクションも素晴らしい。また、カメラワークを多用されているので、映画的だなあと思いました。
八代:嬉しいです。
Q:ひつじのショーンの世界ではセリフがありません。演出する上で意識していることはありますか?
ウィル:まず、かなり長い時間をかけてストーリーを練ります。セリフなしに何が起きているのかを表現しなければならないので、色んなアイデアがあっても使えなかったりするからです。
アイデアがまとまったら、かなり詳細な絵コンテを作ります。そして何度も何度もテスト撮影をします。それをスタッフに見せたり、ニック・パークやピーター・ロード※に見せて感想を聞いたりします。
それから、一度全部僕たちが役を演じます。共同監督のリチャード・フェランと一緒に全てのシーンを演じて、その様子を実写撮影します。その映像を参考としてアニメーターに渡すんですね。アニメーターは今回30人ほどいました。
実写撮影したものを見せると、アニメーターたちに僕たちが何を求めているのか、細かいところまでハッキリと伝えることができるんです。
※ニック・パーク…ストップモーションアニメーター、ディレクター。『ウォレスとグルミット』シリーズの作者であり、ショーンの生みの親。
※ピーター・ロード…アードマンの共同設立者。アニメーター、映画プロデューサー、ディレクターとしてアードマンの数多くの作品に携わる。