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デニス・ホッパーを認識したのは7歳の時に見た『ブルーベルベット』だよ。ニック・エベリング監督『デニス・ホッパー/狂気の旅路』【Director’s Interview Vol.48】

デニス・ホッパーを認識したのは7歳の時に見た『ブルーベルベット』だよ。ニック・エベリング監督『デニス・ホッパー/狂気の旅路』【Director’s Interview Vol.48】

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撮影場所のペルーを訪ねて




Q:この映画の撮影では、デニス・ホッパーのファンにとって歴史的な場所をいくつも訪れていますね。例えばホッパーが『ラストムービー』の編集をしたニューメキシコ州タオスの由緒ある建物「メイベル・ドッジ・ルーハン・ハウス」のような。


ニック:そうなんだよ! タオスには先週もいたんだけど、君もタオスに行ったことがある? タオスは本当に素敵な場所で、実際に行ってみて、デニスがタオスで映画を作ろうとした感覚が理解できた気がしたんだ。今も年に3、4回は訪れてるし、ちょうどこの映画の展示会を企画していて、その準備もあって行ってきたところだよ。


Q:映画のために『ラストムービー』が撮影されたペルーの村チンチェロにも行かれましたね。どんなところでしたか?


ニック:チンチェロはずっと訪ねたいと思っていたけれど、同時にちょっと気後れもしていたんだ。標高1,000mを超える地の果てのような場所だし、僕もスタッフも誰も南米に行ったことがなかったし。でも、ヴェネチア映画祭に出品したバージョンのエンディングが正しいとは思えなくて、やはり絶対に行くべきだと思った。製作費もほとんど底をついていて、知人から航空会社のマイルを譲ってもらったりして、なんとか三日間の旅費を捻出したんだ。


まずクスコに飛んだんだけど、そこがすでに文明の果てみたいな場所だった。高山病の危険もあったし、よくもまあデニスと仲間たちはここで撮影をしたものだと尊敬の気持ちが高まったよ。サティアを含めて4人でチンチェロにたどり着き、適当にトラックから降りたら、そこがまさに『ラストムービー』の中でデニスの役が死んだ場所だったんだ。いい意味でゾッとしたよ。



写真は映画『ラストムービー』より


そこで最初に会った住人が『ラストムービー』撮影当時のデニスのガイドだったことにも驚いた。彼はトマスといって、映画のクライマックスでデニスを撃つ役で出演もしていたんだ。彼は『ラストムービー』に使われていたものと同じポンチョを持ってきて、僕らにプレゼントしてくれたんだ。


そこでサティアが地元の人と喋ったりしている姿を撮ったりしたんだけど、なんだかしっくりこなくてね。その時は映画の前半のどこかに入れようと考えていたけれど、満足できるものは全然撮れてなかった。


で、最終日の三日目に、ふと気づいたんだ。この広場は、僕があらゆる映画の中で一番大好きな、ラストムービーの冒頭シーンの場所じゃないかってね。ラズロ・コヴァックスが撮影して、デニス演じるカンザスが馬に乗って入ってきて、サミュエル・フラー演じる監督が銃をぶっ放して叫んでいた、あの西部劇の撮影をしていた場所だ。「ここはすべてが起きた場所なのに、僕らは何をしてるんだ! 僕らも映画を撮るべきだ!」って思った、その場でカット割りを考えて、サティアに広場に立ってもらって撮影をしたんだ。1シーンまるごと撮りまくって、もう日は暮れかけて、今にも雨が降りそうだったのが、突然、雲が晴れて空が開けたんだ。まるでラストムービーの1シーンみたいだった。



写真は映画『ラストムービー』より


その瞬間を狙っていたわけでもなく、ただ突然そうなった。僕らは山の方に向かって歩いていって、この映画のラストショットを撮った。すごく古典的なやり方でね。まるで電気でも走ったみたいで、お互いに何かを話そうともしなかった。この瞬間に言葉はいらないと思った。そこにはすごく豊かな、サティアのデニスへの信頼が感じられたからね。


Q:今回、同時公開される『ラストムービー』の修復にも携わったそうですね。


ニック:僕は『ラストムービー』を愛していて、世界に再び送り出すミッションがあると感じていたし、この映画もそのために作った。ヴェネチア映画祭でプレミア上映をやった時に、ボローニャ復元映画祭を主催しているチネテカ・ディ・ボローニャという会社からイタリアで配給したいとオファーがあったんだ。僕は「いや、あなたたちは映画の修復の素晴らしい実績があるのだから、『ラストムービー』を修復してくれませんか?」と持ちかけた。おかげで素晴らしい画質で観られるようになったし、デニスが監督したもう1本の埋もれた傑作『アウト・オブ・ブルー』(80)も修復することができたよ。どちらの作品も多くの人の目に触れて欲しいから、今後が楽しみだね!



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監督:ニック・エベリング

1978年、レーガン時代にカリフォルニア州ロサンゼルスで生まれる。両親によって幼い頃からたくさんの映画を見て育つ。90年代初頭は俳優を目指しいくつかのコマーシャルにも出演したが、14歳のときデニス・ホッパーと偶然出会い、それをきっかけにSuper 8カメラを買い自分の映画をつくろうと決意する。 映画製作、脚本、監督を手がけ、米国アート雑誌『Juxtapoz』や『Los Angeles Magazine』でも作品が紹介される。ロンドン・アンダーグラウンド映画祭では、短編映画がオフィシャル・セレクション作品に選ばれた。またサウンドトラック付きのアンダーグラウンド系カルトコミック『Gunwolf』の製作者でもあり、インディペンデント出版社であるダート・バイク・プレスの共同創設者でもある。近年では音楽アルバムを2枚制作し、そのうち1枚はイングリッド社からリリース。同レーベルには、デヴィッド・リンチ、クリッシー・ハインド、アマソンなどが所属している。カリフォルニア州パサデナのアートセンター・カレッジ・オブ・デザイン卒業。本作で初めて長編映画を監督した。 



取材・文:村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。 




『デニス・ホッパー/狂気の旅路』

12月20日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

ALONG FOR THE RIDE LLC,(c)2017

提供:キングレコード 

配給:コピアポア・フィルム 

公式サイト:dennis-hopper-2019.com




『ラストムービー』

12月20日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

(c)1971 Hopper Art Trust, 2018 Arbelos

提供:キングレコード 

配給:コピアポア・フィルム

公式サイト:dennis-hopper-2019.com

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