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映画を通して手をつなげる社会にしたい。HIKARI監督『37セカンズ』【Director’s Interview Vol.52】

映画を通して手をつなげる社会にしたい。HIKARI監督『37セカンズ』【Director’s Interview Vol.52】

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控えるビッグプロジェクト



Q:『37セカンズ』のプロモーションと並行して、次のプロジェクトにも取りかかっているんですよね?


HIKARI:ベルリンでの上映の後、ロサンゼルスに帰って毎日ミーティングでした。一日3人くらいと会って、全部で60人くらい(笑)! その過程で事務所が決まり、ユニバーサルピクチャーと映画を撮ることなんかも決まって、今も冷静な精神状態じゃないです(笑)。今回の『37セカンズ』では映画祭への参加もうまくこなせましたし、ここから次にどこへ向かうのか、まわりからの期待にどう応えるか、という段階ですね。


Q:具体的なプロジェクトを教えてください。超大物との仕事もあるようで……。


HIKARI:「夢にも出てこなかったような人」とのプロジェクトがありそうです(笑)。たとえばマイケル・マン監督が総指揮するワーナー・ブラザースとHBO Maxとのテレビシリーズとか、いろいろと可能性が広がっています。




Q:日本からアメリカへ渡り、映画監督として成功への階段を駆け上がっていきそうですが、何が成功の理由だと感じていますか?


HIKARI:「あきらめなかったから」ですかね。こうして映画監督になるまで、演技やダンス、絵を描いたり、カメラマンなどいろいろやってきて、「これじゃない」「何かが次に待ってる気がする」と考えつつ、とにかく前進の日々でした。女優、ダンサーとして映画やミュージックビデオ、CMに出演していても、自分では納得している状態にはならなかった。でも20代の後半に、母から「あなた、舞台の脚本なんか書いてたでしょう? 監督になるのはどうなの?」と言われ、アメリカで映画を学ぶならトップレベルのUSC(南カリフォルニア大学)がいいと思い、そこの大学院で映画監督について学んだことで今の私がありますね。


Q:今後の目標は何ですか?


HIKARI:スタイルは変わると思いますが、「これはHIKARIの作品だ」とわかるような映画を撮る。それが目標でしょうか。そしてこの先、50代くらいになったら、子供たちのために音楽やアートを伝える仕事をしていたいですね。人生はつねに動いているから、どこでどうなるかわからない。とにかく「ピンときた」ものにトライして、そうではないものを断りながら、若いクリエイターのためのプロデューサーなんかもやっていきたいです。


Q:映画は観る人の人生を変えることもできます。


HIKARI:私の最初の短編『TSUYAKO』(11)は、戦後のレズビアンをテーマにしたラブストーリーでした。実家の祖母が亡くなって10年くらい経った頃、見つけた写真からインスパイアされた作品です。その短編で世界を回ったとき、どの国でも涙を流すシーンが一緒だったりしたんですけど、50代くらいの男性が感動のあまり、「寝たきりの母にカミングアウトする」と言ってくれたことが忘れられません。私がなぜ映画を撮っているのかを知らされた気分でした。「こういうことなのか」と……。あの瞬間、これを天職にしようと思ったのは事実です。



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監督:HIKARI 

大阪市出身。脚本家、映画監督、カメラマン、撮影監督、プロデューサー。

幼少の頃から合唱団を通じてミュージカルやオペラ、EXPOなどで舞台に立つ。南ユタ州立大学にて舞台芸術・ダンス・美術学部を学び、学士号を取得後、ロサンゼルスに移住。女優、カメラマン、アーティストとして活躍後、南カリフォルニア大学院(USC)映画芸術学部にて映画・テレビ制作を学ぶ。 卒業制作映画 『Tsuyako』(11) で監督デビュー。DGA・米国監督協会で最優秀女学生監督賞を含む、合計50賞を受賞。2013年には、LEXUS主催で、「未来を担う新進気鋭のクリエイターを支援」することを目的とした第1回Lexus Short Filmで、日本人代表としてファンタジーアドベンチャー短編映画『A Better Tomorrow』 を制作し、2014年にはUULA配給ショートフィルム『キャンとスロチャン』、スバル・ドラマチックシネマシリーズなどを制作。ダンス短編映画『Where We Begin』 (15) は第14回トライベッカ映画祭でプレミア上映され、最優秀短編映画ノミネーションを含む合計8賞を受賞。

長編映画デビュー作となる『37セカンズ』は、2019年度、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にて日本人初の観客賞と国際アートシネマ連盟賞(CICAE賞:The International Confederation of Art Cinemas Award)の二冠を受賞。その他、同映画祭のGWFF Best First Feature Film Awardにもノミネートされる。

現在は、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、JJエイブラムズなども所属する、アメリカの大手エージェント事務所William Morris Endeavor (WME) Entertainment所属し、米国映画スタジオ・TVネットワーク数社と共に長編映画やTVシリーズを開発中。大阪市出身。脚本家、映画監督、カメラマン、撮影監督、プロデューサー。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。

 




『37セカンズ』

監督・脚本:HIKARI

出演: 佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり/板谷由夏  

2019年/日本/115分/原題:37 Seconds/PG-12/配給:エレファントハウス、ラビットハウス/ (C)37 Seconds filmpartners

挿入歌:「N.E.O.」CHAI <Sony Music Entertainment (Japan) Inc.>

2020年2月7日、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー

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