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デニス・ホッパーを認識したのは7歳の時に見た『ブルーベルベット』だよ。ニック・エベリング監督『デニス・ホッパー/狂気の旅路』【Director’s Interview Vol.48】

デニス・ホッパーを認識したのは7歳の時に見た『ブルーベルベット』だよ。ニック・エベリング監督『デニス・ホッパー/狂気の旅路』【Director’s Interview Vol.48】

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ニック・エベリング監督の人生は、デニス・ホッパーとの出会いによって激変した。1990年代、役者を目指していた14歳のエベリングはたまたまホッパー本人と遭遇し、ホッパーが1971年に発表した監督作『ラストムービー』を観たことで、目指していた役者の道を捨てて、フィルムメーカーの道に進むことを決意したのだ。


そんなエベリングが、敬愛するデニス・ホッパーの伝記ドキュメンタリー『デニス・ホッパー/狂気の旅路』で長編デビューを飾った。アメリカン・ニューシネマの傑作『イージー・ライダー』(69)で一世を風靡しながら、あまりにも先鋭的な怪作『ラストムービー』を発表したことでハリウッドから追われてしまった風雲児の“呪われた日々”を、ホッパーの右腕だった男サティヤ・デ・ラ・マニトウの回想を通じて追いかけている。


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7歳で観た『ブルー・ベルベット』



Q:実は僕も高校生の時に、来日したデニス・ホッパーに会いに行ったことがあります!


ニック:君もか! 僕がデニス・ホッパーに会ったのは14歳の時で、パンクな若僧の時代にデニス・ホッパーに会えるなんて素晴らしいことだよね(笑)。


彼は本当に多才な人間で、ひとつのジャンルに収まらないカウンターカルチャーの唯一無二のヒーローだった。ただ演技をして映画を監督したってだけじゃない。写真家であり、彫刻家であり、ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランドがやったことを受け継いで、さらに次のレベルにまで高めた人なんだ。パンクの原型であり、ビートニクの詩人であり、いろんな側面があるんだよね。


Q:14歳で実際にデニス・ホッパーと対面した時のことを教えてください。


ニック:僕が会ったのは確か1992年か1993年だったと思うんだけど、両親に連れられてパサデナの競馬場に行ったんだ。そこには1930年代から続く「シャンデリア・ルーム」っていう伝統的なバーがあって、僕が入っていくとデニス・ホッパーがたまたま店にいたんだ。


スーツを着て煙草を吸っていて、映画スターらしいオーラがあって、まるでフランク・ブース(ホッパーが演じた『ブルーベルベット』(86)の悪役)みたいで正直ビビったよ。でも彼の笑顔を見ていると近寄りがたい感じはしなくて、当時はシャイな子供だったけれど、こんな機会は二度とないと思って意を決して話しかけたんだ。




人生で有名な役者に会った経験は他にもあるけど、デニスはとてもオープンで、温かくて、わずか数分のことだったけど僕を心から歓迎してくれた。自分にとってのヒーローが実際にもすごくクールな人だったことがわかってすごく嬉しかった。よく「憧れの人には会うべきじゃない」なんて言うけど、僕には例外が3人いるんだ。デニス・ホッパーとジョー・ストラマー(「ザ・クラッシュ」のボーカル兼ギタリスト)、レナード・コーエンだね。


Q:ジョー・ストラマーにも会ったことがあるんですか!?


ニック:ああ。2001年に彼のショーを観に行って、その後一晩中、僕らとつるんでくれたんだよね。人生で出会った中でも最も素晴らしい人物のひとりだよ。すごく光栄だったし、影響も受けた。自宅には、『ラストムービー』のデニスの写真の上にジョーの写真も飾ってあるんだ。レナード・コーエンも、詩人やアーティストとしての功績と同じくらい素晴らしい人で、僕が大好きなこの3人がみんな“本物”だったことがすごく嬉しかったね。


Q:14歳でホッパーに会った時に、ホッパーの出演作で観たことがあったのは『ブルーベルベット』だけだったんですか?


ニック:そうだね。まだ『トゥルー・ロマンス』(93)も観てなかったと思う。もしかして他の映画も観ていたかも知れないけれど、デニス・ホッパーを初めて認識したのは『ブルーベルベット』だけ。7歳くらいの時だったよ。



Q:7歳で、ご両親があなたに『ブルーベルベット』を見せたんですか?


ニック:当時のアメリカでは、親たちは今みたいに子供に注意を払ってなかったんだ(笑)。それに僕らには素晴らしいベビーシッターがいて、いろんなことを教えてくれた。家にはVHSやベータマックスのいい映画がいっぱいあって、そこから適当に掴んで一日中観ていたりもしていた。何だって見ることができる環境だったから、年齢のわりにちょっとませていたかもしれないね。それに幼い時から、いろんな映画との繋がりをちゃんと感じていた。


でも、僕がその時に『ブルーベルベット』を理解できていたかは怪しいよね。15歳になる頃にはもっと理解できていたし、20歳で観直した時にはさらに理解が深まっていたと思う。すごく奥行きのある映画だからね。



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