三島由紀夫が残した謎の言葉・・・その真意とは?
Q:討論の中で、監督ご自身が特に惹かれた言葉ってありましたか?
豊島:ミステリーのように理由がわかんないなと思ったのが、三島が学生たちに語った「君たちが『天皇』と言ってくれれば共闘する」という言葉です。あれが一体どういう意味なのかっていうのを、いろんな人にインタビューで聞いて回りましたね。
三島が生きていた昭和天皇の時代と、平成の天皇、今の天皇の時代で、あり方がガラッと変わってしまっている。右翼が持ち上げるはずだった天皇が今は左翼の護憲のためのシンボルになっているという側面もある。要するにこの50年の間に三島が議論していた「天皇」というものが変質してしまった。
だからこそ、令和の時代を生きる今の日本人ならば、人生に欠かせないテーマだと思います。三島の考えが正しいかどうかは別に、今も考え続けなければいけない、という意味において、「天皇」という切り口に一番興味を持ちましたね。
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Q:三島さんの著書でも「天皇」というワードは随所で出てくるんですが、その意味が、本作を鑑賞して少し理解できた気がしました。
豊島:愛国主義者が担ぎあげる天皇ではなかったという。
Q:楯の会、全共闘の方々も、皆さん考えて、それぞれちゃんと解釈してらっしゃるのが印象的です。
豊島:あそこ好きなんですよ。「天皇って何だと思いますか」って言うと、みんな違うことを言う。
Q:最後にお二人から、映画の見どころやお客さんへのメッセージをお願いします。
豊島:討論の内容を理解しようと思うと、なかなか大変だと思うんですが、50年前にものすごい濃厚なキャラクターの人たちが生きていて、50年後の今も生きている。そしてその人たちをショーケースのように見られる映画なので、討論の内容を脇においてでも「日本人にもこんな人達がいたのか」という興味だけでもいいから見てほしいですね。そういう価値のある作品かなと思っています。
刀根:キャッチコピーにもある「圧倒的熱量を体感」というのが全てだと思います。この熱量を体感しに劇場に来てほしいなと。ハリウッドのスタローンとか出てるようなアクション映画、『エクスペンダブルズ』(10)みたいな(笑)、本当に迫力のある方達がいっぱい見られます。明日からの日本のこととか、自分の周りのこととかを、ちょっと考えるきっかけにしてくれればと。元気が出る映画だと思います。
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監督:豊島圭介
1971年静岡県浜松市生まれ。東京大学在学中のぴあフィルムフェスティバル94入選を機に映画監督を目指す。卒業後、ロサンゼルスに留学。AFI監督コースを卒業。帰国後、篠原哲雄監督などの脚本家を経て2003年に『怪談新耳袋』(BS-TBS)で監督デビュー。以降映画からテレビドラマ、ホラーから恋愛作品まであらゆるジャンルを縦横無尽に手掛ける。映画は『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(10)、『ソフトボーイ』(10)、『花宵道中』(14)、『ヒーローマニア-生活-』(16)、『森山中教習所』(16)など。テレビドラマは「ホリック~xxxHOLiC~」(13)、「黒い十人の女」(16)、「徳山大五郎を誰が殺したか?」(16)、「I”s(アイズ)」(18)、「ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ」(19)、「特捜9」(19)などがある。
プロデューサー:刀根鉄太
富山県生まれ。東京大学卒業後、TBSに入社。主なプロデュース作に、『スマホを落としただけなのに』(18)、『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』(19)。
取材・文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』
3月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
(c)SHINCHOSHA
(c)2020 映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会
配給:ギャガ