中村倫也出演のおすすめ映画(2020)
9.『影裏』(20) 監督:大友 啓史
『3月のライオン』に続く、大友啓史監督とのタッグ作。本作では、短い出番ながら最重要キャラクターを演じており、「おいしい」ポジションをものにしてきた中村らしい味わい深い名演で魅了する。
会社の転勤で、岩手・盛岡に移り住んだ今野(綾野剛)。職場で同い年の同僚、日浅(松田龍平)と打ち解けた彼は2人で釣りに出掛けるなど穏やかな時間を過ごすが、ある日突然に日浅は行方をくらませてしまう――。行方を案じる今野は、やがて日浅の驚くべき“真実”を知ることとなる。
観る者を包み込むような渓流や自然風景を美しくとらえた映像、綾野と松田と揺らぐように静かな熱演が印象的な良作。中村は、今野の過去を知る旧友として登場。本作での彼の演技のスゴさは、観てのお楽しみだ。
10.『水曜日が消えた』(20) 監督:吉野 耕平
中村の最新主演映画となる本作は、彼の突出した演技力がいかんなく発揮された1本となった。解離性同一性障害を患う男性に扮し、曜日ごとに人格が変わる――つまり、“7役”を演じているのだ。
7つの人格が、1つの身体をシェアしている男性。だが、ある日“水曜日”が消えたことで、日常が大きく動き始める。“自分”の身に、何が起こっているのか?
メインとなるのは“火曜日”のキャラクターだが、撮影中は1日で7役を演じ分けるという極めてハードなチャレンジもこなしたとか。現時点での、中村の新たな代表作といえるだろう。公開を楽しみにお待ちいただきたい。
『君の名は。』(16)にCGクリエイターとして参加した吉野耕平が監督・脚本・VFXを務め、スタイリッシュな映像世界を構築している。撮影では、中村の演技プランによって役の人物像がより深まったこともしばしばだったそう。
なお、今年は大泉洋、松岡茉優らと共演する話題作『騙し絵の牙』(20)、佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊と顔をそろえるサスペンス『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(20)が待機している。
上記に挙げた作品群を観てわかるとおり、中村は作品に合わせてメインもバイプレイヤーも自在にこなせるため、多くの作品で「さりげなくおいしい」ポジションを獲得してきた。作品の屋台骨となり、クオリティを担保できる貴重な存在といえよう。
現在は主演ドラマ『美食探偵 明智五郎』や、YouTube番組『中村さんちの自宅から』も人気を集めており、本人のTwitterはフォロワー114万人を超える。この先、出演本数も影響度も、加速度的に上がっていくだろう。
長い下積みを越えて――。中村倫也の本領を発揮するフェーズが、ついにやってきた。
文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」