2005年に俳優デビューし、今年で役者人生15年目を迎える中村倫也。今でこそ映画・テレビドラマ・舞台・CMと、彼の顔を見ないときはないほどの人気俳優だが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。
デビュー初期から、鬼才・実相寺昭雄監督らが参加したオムニバス『乱歩地獄』(05)では小林少年に扮し、石原慎太郎が製作総指揮・脚本を務めた戦争映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』(07)では特攻隊員と印象深い役を演じてきたものの、本格的なブレイクはここ2~3年。長い雌伏のときを耐え抜いてきた。
しかし、だからこそ中村の演技には、今年33歳とは思えぬ熟練の風格が漂う。少年のようにイノセントなキャラクターから、狂気が実体化したような危険な人物まで演じられる、当代きっての「引き出しの多さ」は、彼ならではの武器だろう。
見逃せない男、中村倫也。今回は、彼の近年の出演映画の中から、10作品を厳選して紹介する。
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中村倫也出演のおすすめ映画(2016~2017)
1.『星ガ丘ワンダーランド』(16) 監督:柳沢翔 111分
中村にとって、『SPINNING KITE』(13)に続く2度目の主演映画。「星ガ丘駅」の駅員として働き、落とし物の管理などを行う青年が、20年前に失踪した母の死の真相を探るヒューマンミステリーだ。
中村は、自分のもとを去った母の幻影に囚われた、ナイーブな主人公をきめ細やかに表現。胸の内には激しい感情を抱えながらも、なかなか表出させることができない複雑なキャラクターをしっかりと演じ切っている。
作品全体を通しても、車の中に雪が降るなどの“回想”の演出、不思議な空気感が印象深い。新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏、市原隼人、木村佳乃、松重豊といった豪華な面々も出演している。
なお、中村は同年の『日本で一番悪い奴ら』で、ドラマ『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』(15)に続いて白石和彌監督の現場に参加。正義感がこじれて汚職に手を染める警察官(綾野剛)に振り回される、気弱な刑事を演じている。その後、記憶に新しい同監督の代表作『孤狼の血』へと繋がっていく。
2016年はシリアスなキャラクターを多く演じており、テレビドラマ『闇金ウシジマくん Season3』では周囲を洗脳する狂気じみた詐欺師役に挑戦した。
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2.『愚行録』(17) 監督:石川慶 120分
妻夫木聡と満島ひかりが兄妹を演じた衝撃的なサスペンス。サラリーマンの一家惨殺事件を調べる週刊誌の記者が、人間の醜い本性を目の当たりにしていく。
世間を騒がせた一家惨殺事件から1年。未だ謎が多い事件を再調査するべく、主人公の記者(妻夫木)は関係者に取材を開始。証言から浮かび上がってきたのは、完璧に思えた被害者家族の“裏の顔”だった――。
証言をする側の人間が嫉妬や羨望、打算、利己といった欲望にまみれているのが、本作の大きな特徴。中村は、殺された一家の妻の大学時代の同期を怪演。快活な青年に見せかけてどす黒い顔を持つ複雑なキャラクターを、絶妙なコントラストで演じている。
タイトルにもあるとおり、人々の「愚行」をダークに描く本作。『ユージュアル・サスペクツ』(95)を彷彿とさせる冒頭シーンや、意表を突いた展開など、演出・構造面でも非常に完成度が高い一作だ。
3.『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17) 監督:三木 孝浩 113分
生田斗真と広瀬すずが教師と生徒を演じたラブストーリー。青春恋愛映画の名手・三木孝浩監督が、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の脚本家・岡田磨里とタッグを組んだ。原作は、河原和音の人気マンガ。
17歳の女子高生が、初めて抱いた「恋」という感情。しかし、その相手は教師だった……。ぎこちなくもまっすぐに、想いを伝えるヒロイン・響を広瀬が瑞々しく演じ、生田が響の将来を第一に考え、苦悩する教師・伊藤を丁寧に表現。
本作で中村が扮したのは、伊藤の同僚。学校内の人気者であり、響の同級生にも好意を寄せられるが、本人は職場の教師を好きで……という、伊藤の鏡写しのようなキャラクターだ。
余談だが、中村の2017年後半は軽妙な棋士をひょうひょうと演じた『3月のライオン』、清水富美加・松井玲奈が漫才コンビを演じた『笑う招き猫』(17)、なぎなたを題材にしたスポーツマンガの実写映画化『あさひなぐ』(17)など、明るい雰囲気のキャラクターや作品が続いた。