窪田正孝出演のおすすめ映画(2019-2020)
9.『Diner ダイナー』(19) 監督:蜷川実花 117分
写真家としても世界的に活躍する蜷川実花監督が、藤原竜也を主演に迎えた華美なアクションエンターテインメント。「殺し屋専用」のダイナーを舞台に、「いつ殺されてもおかしくない」状況下で接客する羽目になったウエイトレス(玉城ティナ)の受難が描かれる。
蜷川監督らしい極彩色のデコラティブな舞台設定、華麗なアクション、本郷奏多、土屋アンナ、小栗旬、真矢ミキ、奥田瑛二といった面々が扮した濃いキャラクター、そして画面を彩る料理の数々――。目を休める余白がないほどの高密度の画面が、視覚を常に刺激する。
顔中傷だらけの殺し屋に扮した窪田は、母親のスフレの味を追い求める孤独な男の悲哀を静かに、だがよく通る声で体現。しかし、ある出来事がトリガーとなり豹変する。そこからは、窪田の独壇場だ。得意技でもある、鬼気迫る憑依演技をたっぷりと堪能させてくれる。
2019年には、ドラマ『ラジエーションハウス 放射線科の診断レポート』(19)で主演を務めた。こちらでは、本田翼扮する幼なじみを愚直に想い続けるレントゲン技師役で、コメディセンスも発揮。
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10.『初恋』(20) 監督:三池崇史 115分
恩師である三池監督と久々に組んだ、娯楽性みなぎる主演作。余命わずかと診断されたボクサー(窪田)が、薬漬けの女性(小西桜子)と出会い、その後ヤクザ・警察・チャイニーズマフィアの抗争の渦中に叩き落されていく。
染谷将太、ベッキー、内野聖陽といった面々がぶっ飛んだ演技をたたきつけ、三池監督らしいバイオレンスとコメディとアクションとホラーがごった煮になった世界で、窪田はただ一人「部外者」であり続けるという、難易度の高い役どころに挑戦。常に状況に対して慣れず、鮮度を保った演技で、観客との橋渡しの役目を見事に果たしている。
とはいえ、ボクサーという役に対して真実味もきっちりともたらせており、試合シーンでは引き締まった肉体美を披露。抗争の中で、「死んだ気になればやれるはず」と生存本能に目覚めていく「心情の変化」の流麗さは、流石の職人芸だ。
なお、ヒロイン役に抜擢された小西とは『ファンシー』(20)でも共演している。
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窪田がこれまで演じてきた役は、「劇中で変化する」ものが多いが、そういった難役を任されるのは、彼の表現力が盤石であるからこそ。身体と心情のバランス――「演技の幹」が太く、強い窪田は、フィクションの只中にあっても、観客を納得させてしまう。
演出や衣装、カメラワークなどの力を借りることはあっても、頼ることはない。窪田が動けば、役が変わる。これから年を重ね、彼自身がどう「化けて」いくのか、楽しみに見守っていこうではないか。
取材・文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema」