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狂信化してしまった若者たちは、人生を取り戻すことができるのか『その手に触れるまで』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督【Director’s Interview Vol.58】

@Christine Plenus

狂信化してしまった若者たちは、人生を取り戻すことができるのか『その手に触れるまで』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督【Director’s Interview Vol.58】


撮影中に変化していく脚本



Q:当初の脚本から、撮影を通して変わった部分はありますか?


ジャン=ピエール:他の映画作家もそうだと思いますが、脚本は書いた時点でいったん終了しますが、その脚本どおりに映画を撮るということは、ほとんどありません。脚本作りは映画にとって重要です。でもリハーサルの間にどんどん変わっていくのです。「このセリフは言うべきじゃない」と判断したら、すぐに外します。


リュック:映画は生きたプロセスなので、リハーサル、撮影中に変化していきます。特にセリフはリハーサル中にどんどん変わりますので、その都度、書き換える感じですね。


ジャン=ピエール:儀式や祈りのシーンでは、必ずムスリムの儀式に詳しいジャフィさんという友人に立ち会ってもらい、コーチを頼みました。祈りや、コーランに書いてあること以外でも、どういうものを悪いとみなすかを教えてもらったのです。たとえばアメッドが(劇中で出会った少女の)ルイーズとキスしてしまった後、どういう言葉を発したらいいのかなど、ジャフィさんの指摘によって変化していきました。




Q:現場で最も大きく変わったシーンはどこですか?


ジャン=ピエール:ラストシーンでしょうか。2パターン、撮ったのです。最初のパターンだと生命力に欠けると感じ、別のパターンで撮り直し、そちらを使うことにしました。



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その結末も含め、「イスラム教に狂信化してしまう少年」というセンシティヴなテーマを扱いながら、観客の想像力のひとつ先へと突き進む。そんなダルデンヌ兄弟らしい作風を、『その手に触れるまで』は、またしても実感させてくれるはずだ。




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@Christine Plenus


監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

兄のジャン=ピエールは1951年4月21日、弟のリュックは1954年3月10日にベルギーのリエージュ近郊で生まれる。リエージュは工業地帯であり、労働闘争のメッカでもあった。ジャン=ピエールは舞台演出家を目指して、ブリュッセルへ移り、そこで演劇界、映画界で活躍していたアルマン・ガッティと出会う。その後、ふたりはガッティの下で暮らすようになり、芸術や政治の面で多大な影響を彼から受け、映画製作を手伝う。原子力発電所で働いて得た資金で機材を買い、労働者階級の団地に住み込み、土地整備や都市計画の問題を描くドキュメンタリー作品を74年から製作しはじめる。同時に75年にはドキュメンタリー製作会社「Derives」を設立する。

78年に初のドキュメンタリー映画“Le Chant du Rossignol”を監督し、その後もレジスタンス活動、ゼネスト、ポーランド移民といった様々な題材のドキュメンタリー映画を撮りつづける。86年、ルネ・カリスキーの戯曲を脚色した初の長編劇映画「ファルシュ」を監督、ベルリン、カンヌなどの映画祭に出品される。92年に第2作「あなたを想う」を撮るが、会社側の圧力により、妥協だらけの満足のいかない作品となった。

第3作『イゴールの約束』では決して妥協することのない環境で作品を製作、カンヌ国際映画祭国際芸術映画評論連盟賞をはじめ、多くの賞を獲得し、世界中で絶賛された。第4作『ロゼッタ』はカンヌ国際映画祭コンペティション部門初出品にしてパルムドール大賞と主演女優賞を受賞。本国ベルギーではこの作品をきっかけに「ロゼッタ法」と呼ばれる青少年のための法律が成立するほどの影響を与え、フランスでも100館あまりで上映され、大きな反響を呼んだ。第5作『息子のまなざし』で同映画祭主演男優賞とエキュメニック賞特別賞を受賞。第6作『ある子供』では史上5組目(他4組はフランシス・F・コッポラ、ビレ・アウグスト、エミール・クストリッツァ、今村昌平、12年にミヒャエル・ハネケ、16年にケン・ローチが2度目の受賞)の2度のカンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞者となる。第7作『ロルナの祈り』で同映画祭脚本賞、第8作『少年と自転車』で同映画祭グランプリ。史上初の5作連続主要賞受賞の快挙を成し遂げた。第9作『サンドラの週末』では主演のマリオン・コティヤールがアカデミー賞R主演女優賞にノミネートされた他、世界中の映画賞で主演女優賞と外国語映画賞を総なめにした。アデル・エネルを主演に迎えた第10作『午後8時の訪問者』もカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品。そして、第11作『その手に触れるまで』も同映画祭コンペティション部門に8作品連続出品という前人未到の快挙を達成し、さらに監督賞も受賞。本受賞により、審査員賞以外の主要賞受賞の偉業を成し遂げた。

近年では共同プロデューサー作品も多く、マリオン・コティヤールと出会った『君と歩く世界』の他、『ゴールデン・リバー』『プラネタリウム』『エリザのために』などを手掛けている。他の追随をまったく許さない、21世紀を代表する世界の名匠である。




取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。







『その手に触れるまで』

6月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

(c) Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

監督写真:@Christine Plenus

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