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危機感を共有するために必要なのは、新しい伝え方の発明『ワンダーウォール 劇場版』脚本:渡辺あや【Director’s Interview Vol.60】

危機感を共有するために必要なのは、新しい伝え方の発明『ワンダーウォール 劇場版』脚本:渡辺あや【Director’s Interview Vol.60】

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危機感を伝えるためには…



Q:個人的に『メゾン・ド・ヒミコ』(05)はとても好きな作品で、見たときは衝撃を受けました。あれからもう15年です。今回の『ワンダーウォール』と共にオリジナル脚本ですが、この15年で脚本の作り方などに変化はありますか。


渡辺:変化したのは、社会に対する危機感ですね。元々私は政治に疎くて、色んなことが分かっていないという自覚がありました。社会のことがわかっている政治家の人たちに、税金を使ってもらえたらそれでいいや、みたいな態度だったんです。


それでも5年前ぐらいからでしょうか。そんな政治に疎かった自分でさえ、昨今の状況にこんなにも危機感を抱いていること気づいたんです。なおかつ、自分以上に危機感を抱いていない人が周囲にたくさんいることも、すごくショックでだんだん恐ろしくなってきました。みんなもっと焦りましょうよ!みたいな気持ちが強くなってきましたね。次に表現のバトンが回ってきた時には、まずそのことから話を始めたいと思うようになっていました。


私だけでなく、このことに気づいている人たちが、何とかしなければという危機感を強く訴え出したのが、この数年だったのではないかと思います。




Q:危機感を持ってない人に、それを共有するのはすごく難しいですよね。自分たちの社会に迫っている危機をなぜ分かってくれないんだろうって、それこそ「もどかしさ」をすごく感じます。そんな中、ごく自然な形でその危機感を共有してくれそうなのが、この『ワンダーウォール』でした。


渡辺:そうなんですよね。共有するのは本当に難しいんです。何かね、怒ったらダメみたいですよ(笑)。表現に怒りが入った瞬間に恐がられちゃうというか、そんなことに自分は関わりたくないって、ピョンって引かれちゃうんです。でも国の偉い人たちがこれだけめちゃくちゃなことをやっているに、怒ってないことの方が恐いんですけどね。。


Q:その感覚、すごくよくわかります。


渡辺:よほど言い方を気を付けるとか、一見怒ってない風に話すとか、伝える技術が必要な時代なんだということを、ひしひしと感じています。また、こうやっていろんな方とお話させていただく中で、この危機感を感じているのは私だけじゃないと分かりましたし、さらに何か新しい伝え方を発明する必要があるのだと思いました。


Q:そうですね。しっかりと伝えていくために、その辺を努力していくべきなのだということは痛感します。


渡辺:本当にそうだと思います。明らかに正しいことを言っているのに、野党というだけで全然話を聞いてくれない人とかもいて、やっぱり新しい伝え方は必要なんだろうなって気がしますね。


ただ、このコロナ禍の中で、今までいかにひどかったかっていうことにようやく気付いて、皆さんちゃんと怒り出してきている気がしますね。最近インタビューを受けると、この時期に『ワンダーウォール』が公開されることをどう思われますかって、聞かれることが多いのですが、それはきっとそういう背景を踏まえて、皆さん感じていらっしゃることなのかなと思います。


Q:周囲に危機意識を持った人間が少ないと迷いも生じるし、自分たちが正しいと思っていたことが、揺らぎかねない気がします。そんな時に『ワンダーウォール』を見るとやっぱりほっとするし、間違ってなかったんだなと気づかせてくれる作品でした。


渡辺:良かったです。確かに、味方がここにいますよっていうことを、伝えたかったのかもしれませんね。この機運を盛り上げていきたいですよね。



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