3.『勝手にふるえてろ』(17) 監督:大九明子 117分
『君の膵臓をたべたい』がライトな大衆から厚く支持された作品なら、『勝手にふるえてろ』はコアな映画ファンから火が付いた作品だ。松岡茉優が主演を務めた、こじらせラブコメディで、メイン館である新宿シネマカリテの興行収入新記録を叩き出した。
本作は2人の男性のどちらを選ぶか、1人の女性が思い悩む構造になっており、主人公のヨシカ(松岡)が10年間片思いをしているクールな“イチ”(北村)、ヨシカに想いを寄せるひょうきんな会社の同僚“ニ”(渡辺大知)といった、正反対のキャラクターが登場。
松岡の“コミュ障”な閉じた演技と、振り切った痛々しさが秀逸な作品だが、北村は「10年間片思いするにふさわしい」耽美な色気を全身にまとっており、説得力は抜群。同時に、真意を読み取らせない浮遊感も搭載し、「君だけに見てほしかった」などの王子様的なセリフも平然と放つ。学生時代を演じたシーンの、マッシュルームヘア姿も微笑ましい。
本作は全編にわたって、監督・脚本を務めた大九明子監督のセンスがほとばしっており、劇中のコミカルなミュージカルシーンや、必死に生きているのに隙だらけで可笑しいヨシカの日常、「ザッツビューティフルサンデーだよ」「急! 現実って急!」といったトボけたセリフ、劇中に仕掛けられているトラップなど、クセになる要素が満載。永く愛されるに足る傑作だ。
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