役者と唯一じっくり話せる「衣装合わせ」の重要性
Q：スタッフは、どのポジションから決めていくのでしょう。
藤井：まずは撮影ですね。撮影監督が決まると、撮影監督が一番信頼してる照明技師がセットでくっついてきます。
今回の場合は、撮影→照明→録音→美術の順だったかな。僕を育ててくれた映画の母、美術の部谷京子さんとやりたいって浩子さんにプレゼンをして、録音技師の岡本立洋さんは浩子さんと僕の映画の両方をやってくれているので、スムーズに決まりました。
ヘアメイクに関しては、俳優によっては専属の方々がいらっしゃることもあるので、ちょっと特殊ですね。まずは撮影部から決めて、演出部、制作部が決まった後に、他のメンバーたちもどんどん決まっていく流れです。
Q：撮影スタッフは、ロケハンもしなきゃいけないから早めに決める、というのもあるのでしょうか。
藤井：そうですね。大体クランクインの3ヶ月前ぐらいにはもう決まっていますね。プロデューサー、ラインプロデューサーを筆頭とする制作部さんって、大きい現場だと半年前から、普通の現場でも3ヶ月前や2ヶ月前から準備を始めているので、メインロケハンの1日目――1ヶ月前くらいには、もう全スタッフ揃ってますね。
Q：例えば、役者さんの準備期間みたいなものも、用意されるのでしょうか。
藤井：『宇宙でいちばんあかるい屋根』だと、清原さんが当時17歳だったので、事前にマネージャーさんと「こういう想いなんだよ」というのを共有はしたんですが、基本的に本人と何か喋るときって、絶対的なチャンスが1回しかないんですよ。ズバリ「衣装合わせ」ですね。
役に対しての想いや台本の疑問点を一緒に共有する場が、衣装合わせなんです。僕は、衣装合わせの時までに、「キャラクターシート」という「19〇〇年生まれ、血液型○型、好きな音楽がこれとか、家族構成はこうで、なぜ彼女が台本上こうなってしまったのか」とか、脚本に書かれていない部分を何千字か書いて、キャストごとにお渡しします。それを基に、役作りをしてくださる方もいらっしゃいますね。
Q：手厚い……！ よくインタビューで「衣装合わせで、イメージが合致した」というお話をお聞きしますが、そういうことなんですね。
藤井：僕は現場でいきなり合わせるのが怖いので、最近では、主演の人は衣装合わせを最低2回やっています。「俳優さんが衣装合わせのときは何も言ってこなかったのに、現場でやっぱりこれできない」とかのトラブルを聞いたりもします。自分の現場では今までありませんが、もし起こると悪夢でしかないですね（笑）。
『ヤクザと家族 The Family』だと、綾野剛さんは歳も近いこともあり、台本について毎晩電話したり、一緒にご飯食べながら役を詰めていったり、そういう風にできる役者さんもいます。ですが、全員とそれができるとは思わない方が良くて、本当に衣装合わせに全てをぶち込む感じですかね。
Q：衣装合わせは、クランクインのどれくらい前に行われるものなんでしょう？
藤井：早くて1ヶ月前ですね。今回、伊藤健太郎さんだったらバンジョーの練習があるので、クランクイン1ヶ月前には衣装合わせをしながら、バンジョーの先生をお呼びして、衣装合わせ中に練習もしたりしました。
でも、キャストが決まらないと衣装を集められないじゃないですか。そうすると僕の場合は、3週間前から1週間前の14日間ぐらいの中で、何回かに分けて衣装合わせをするってケースが、非常に多いですね。
Q：衣装合わせ以外だと、キャスト同士が話せる場は読み合わせなどでしょうか？
藤井：僕は、読み合わせをしたくないタイプなんです。会議室でしゃべる言葉と、現場でその役になって紡がれる言葉はやっぱり違うから。僕の作品だと、クランクイン前に俳優部が会う場は、そんなに無いかもしれないです。
前田：『宇宙でいちばんあかるい屋根』の場合は、桃井さんが日本にいらっしゃらなかったので、物理的に難しかったというのもありますね。でも、本読みは映画よりドラマの方が多いんじゃないですかね。私は一度もしてないですね。
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