「忙しすぎる」日本の映画制作環境の問題点
Q:今回だと、CGも使用されていますよね。「ここはCGで行くぞ」という判断は、脚本の段階で決めていたのでしょうか。
藤井:脚本の時はCGっていう判断は正直まだしてなくて、清原さんと桃井さんのスケジュールと、暑さと、いろんなことをみて、クランクインの3ヶ月前ぐらいに、CGとセットの決断をしました。
前田:それで私はもう崩壊したと思いましたね(苦笑)。セットを作んなきゃいけないし、CGをやらなきゃいけない。そこにオールスターキャストがのし掛かってくる。どうすればいいんだよっていう。でもセット+CGにして正解でしたね。
Q:撮影期間って、今の日本ではどれくらいが一般的なのでしょう。
藤井:大作と呼ばれるものだと、大体2ヶ月くらいでしょうか。通常は、大体1ヶ月から1ヶ月半ぐらいですね。今回の僕たちだと、8月頭から撮り始めて8月末に終わりました。
Q:日本の映画づくりはとにかくスケジュールが大変で、「役者も監督も準備時間が足りない」と問題視されているインタビューをよく拝見します。この辺り、いかがですか。
藤井:純粋に本数がめちゃくちゃ多いですよね。日本で作られてる映画の数が多いぶん予算も分散されてしまうし、有名な俳優だとドラマとかにガッとスケジュールを渡しちゃってる反面、1本1本に対して十分に向き合えない。
「昨日現場が終わって今日クランクインです」みたいなことは多いですし、もうちょっと時間がほしいなとは思います。「終わったら次に向かう」っていうことに慣れちゃってるから、いつもアップアップで休めない。
前田:私も心から、そう思います。もうちょっと余裕を持って、時間的な贅沢をできればって。安全に誰もケガをせず、きちんと映画を仕上げられるためにも、ある程度の睡眠はみんなにとってほしいし、時間の余裕はもう少しほしいので、頑張りたいなと思います。
藤井:でも、決められたものの中で、どれだけのパフォーマンスをするかっていうのは、僕たちも一つ課題にしなきゃいけないですよね。予算が増えたからって、傑作になるとは限らない。それこそ上田慎一郎監督が『カメラを止めるな!』(17)で社会現象を起こしたり、去年だったら片山慎三監督の『岬の兄妹』(19)とか、低予算でも上質なのものはたくさん出てきていますし。
何でもかんでもお金かけていいってことではなくて、スタッフが十分に休めて、リスペクトのある報酬があり、良い環境で撮れるっていうのは、今後僕たちが一緒に作り上げていけたらいいなとは思っています。
前田:そうですね。