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【CINEMORE ACADEMY Vol.3】プリプロダクション編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

【CINEMORE ACADEMY Vol.3】プリプロダクション編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

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スタッフ間のイメージ統一を図る「美打ち」



Q:本当に限られた時間の中で、プリプロダクションが進んでいくことがわかりました。そんな中で藤井さんは、スタッフ・キャストの方々に対して、どうやってイメージの共有を図っているのでしょうか。


藤井:一番大事になってくるのが、「ロケハン」と「美打ち」ですね。


僕の場合は大きく分けて「美打ち」を「プレ美打ち」「本美打ち」の2回行うんですが、その前に衣装ディレクターとか、撮影監督とかとは、個人個人、お昼や夜にご飯を食べながら打ち合わせをしていくんですよ。このビジュアルはこういうトーンでいきたいとか、今回はカメラ何を使うかとか、衣装の色のイメージとか……事前に各スタッフと話すようにしています。


「美打ち」で明暗が分かれるというか、ここでフワフワしてると「監督って何をしたいんだろう?」って思われて、スタッフが動いてくれなくなる。例えば後から「予算的にエキストラがこれくらいしか用意出来ない」みたいに。だから、もう美打ちの段階で「このシーンはエキストラがこれくらいほしい」「ここでこういう特殊なカットを撮りたい」「この夢のシーンは全部セットになると思うけど、こういうイメージでやる」って伝えます。


例えば『宇宙でいちばんあかるい屋根』では事故のシーンがありますが、「雨が降っている中で俯瞰のカットを撮りたい」と先手を打って言ってしまう。当日に「上から撮りたい」と言うと、「無いよ。そんな機材」ってなっちゃいますから。




Q:藤井さんは、「映画では絵コンテを描かない」とお話しされていましたが、自分の中にあるビジュアルを言語化して伝えるのは、ものすごく大変じゃないかと思うんです。どうやって「映像の言語化能力」を培われてきたのでしょうか。


藤井:駆け出しの時は、まだそのスキルがなかったんです。「映像と映画ってこういうもんだよね」っていうルールの中で進んでいっちゃったときに、すごく反省したというか悔しかった。そのトラウマから、言語化を心がけるようになりました。


僕はただでさえ若手なので、とにかく全部を決めるようにしてますね。「ここは決めたくないです」ってことすらも、決める。現場に行ってみないと分からないことを、「今考えてません」と言うことも監督の仕事だと思いますが、それでも「決めてないので、アイデアをください」と伝える。「うーん」と間を空けないように、はっきりと言うようにしてます。


Q:本作もそうですが、僕が藤井さんの作品と出会って打ちのめされたのは、一度見たら忘れられないビジュアルです。過激な画で印象付ける方もいますが、藤井さんは美しさで鮮烈に残す。この美的センスは、どうやって磨かれているのでしょう。


藤井:やっぱり映画が好きだから、これまで観てきた中で出会った、好きな作品が大きいのかな。父親に映画館と美術館にたくさん連れて行かれたのも、もしかしたら影響しているかもしれないですね。


今回は、浩子さんと好きな映画の趣味が合っていたから、世界観の共有が明確でした。「絵本みたいな世界」という感覚が、徹底してあったんです。ミッシェル・ドラクロワの絵を用いて、共有を図りましたね。


前田:そういう絵を見せて、「こういうところで撮りたい」って言ったときに、ラインプロデューサーの森さんが10分ぐらい沈黙してましたね。どうすりゃいいんだって。


Q:(笑)。



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