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イザベル・ユペール『ポルトガル、夏の終わり』 役に共感して演じるわけではない。それが私のやり方。【Actor's Interview Vol.5】

イザベル・ユペール『ポルトガル、夏の終わり』 役に共感して演じるわけではない。それが私のやり方。【Actor's Interview Vol.5】

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即興を意識し、本能に従いつつ考え抜いた演技こそ大切



Q:長回しで会話が続いたり、多くのシーンがとてもリラックスした自然なムードです。即興の部分も多かったのですか?


ユペール:基本的にセリフはほぼ脚本どおりに演じたので、即興とは言えないわね。いくつかのシーン、たとえばフランキーが地元のパーティーに招かれるシーンは、セリフがざっくりとしか書かれていなかったので、即興が入った。でも、これはロバート・ウィルソン(舞台演出家)の言葉なんだけれど「演技とは即興である」というのが、私の座右の銘よ。その言葉に従って、観る人に信憑性を与える表現をしたい。でもそれは、「自分でセリフを創造する」ということではないの。


Q:以前、あなたは「本能に従って演技をする」と語っていましたが……。


ユペール:たしかにそんなことを言った気がするけど、突き上がってくる本能と、熟考したうえでの演技のコンビネーションが大切だと思う。的確に本能を使うことも、考えがあってのうえ。人生の経験も演技に生かされる。でも結局、重要なのは監督と俳優の関係なのよね。そして映画は、カメラや編集など多くの要素が「その瞬間」を創造するわけで、本能からの演技がどれだか大切なのか、私には何とも言えないわ。




Q:演技への影響という意味で、今回のポルトガルのシントラというロケ地はどうでしたか?


ユペール:じつはシントラには何度も来たことがあるの。私はドイツ人のヴェルナー・シュレーター監督と『マリーナ』(91)、『Deux(原題)』(02)と2本の映画を作ったのだけど、『Deux』はシントラで撮影したのよ。だから今回、今は亡きヴェルナーのことを思い出したわ。シントラはとてもユニークな街で、その光景は荘厳で、感動的で、時に畏怖さえ感じさせる。だから物語の背景として完璧なのね。景観が私たちの演技を変化させるわけではないけれど、映画を観る人にとってはビジュアルとして忘れがたいインパクトを与えると思うわ。


Q:『ポルトガル、夏の終わり』は演技のアンサンブルが魅力の作品ですよね。


ユペール:そのとおりよ。今回の現場では、私は相手によってフランス語で話したり、英語で話したり、あるいはひとつの会話の中に両方の言語が混じってしまったり(笑)、とにかく面白い体験になった。そうした共演者たちとの空気感から、独特な演技も生まれたんじゃないかしら。



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