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イザベル・ユペール『ポルトガル、夏の終わり』 役に共感して演じるわけではない。それが私のやり方。【Actor's Interview Vol.5】

イザベル・ユペール『ポルトガル、夏の終わり』 役に共感して演じるわけではない。それが私のやり方。【Actor's Interview Vol.5】

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いつか日本人監督とも組んでみたい



Q:完成作を初めて観たときの印象を聞かせてください。


ユペール:じつを言うと、自分が出演している映画を観るのはあまり好きじゃないの。がっかりするというわけじゃないけど、「監督はここを使ったのね」とか、冷静に観るしかないからよ。2回目は映画の世界に入り込める。今回は満足しているわ。最初に言ったとおり、アイラの演出が見事だった。表面で語られることと、その奥で語られることのバランスは、たとえば人が社会に対して行う言動と、その裏にある本心のバランスのように感じられたの。「こんなこと言うつもりじゃなかった」って経験はあるでしょう? 大好きな相手にがっかりすることもある。そんな感覚、人間の心の曖昧な部分が映画で表現されていたわ。


Q:そういう意味では、この『ポルトガル、夏の終わり』は、エリック・ロメール監督や、あなたも一緒に仕事をしたホン・サンス監督の作風も思い出します。


ユペール:たしかにそうね。うーん、でもそうとは言いたくないわ。やっぱりこれはアイラ・サックスの世界だと思う。こういうインタビューで、よく他の監督の作品との比較を質問されるけど、みな独自の作風があるわけだから、あまり答える意味はないのよ。




Q:では今後、一緒に仕事をしてみたい監督は?


ユペール:日本の濱口竜介監督ね。彼の『寝ても覚めても』(10)を観て、これまでの日本映画、もっと言えばフランス映画も含めて、過去のどんな作品とも違う、独特のムードを作り出す監督だと感じたの。濱口監督の特集上映がパリで開催され、彼も来場すると聞いていたのだけど、残念ながら私は行くことができなかった。お会いしたかったんだけど、今度日本へ行くので……。


Q:本当ですか?


ユペール:2020年はテネシー・ウィリアムズの「ガラスの動物園」の世界ツアーがあるの。秋には日本での公演もあるから、今から本当にワクワクしているわ。



このインタビューが行われたのは、新型コロナウイルスのパンデミックの前のことで、2020年の9月に東京の新国立劇場で予定されていた、イザベル・ユペールの「ガラスの動物園」の日本公演は残念ながらキャンセルになってしまった。近い将来、彼女の舞台が日本でも観られること、そしていつの日か濱口竜介監督作品への出演がかなうことを心待ちにしたい。



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イザベル・ユペール

1953年3月16日、フランス・パリ出身。ヴェルサイユの音楽・演劇学校やパリの国立高等演劇学校などで学び、72年『夏の日のフォスティーヌ』で映画デビュー。クロード・シャブロル監督の『ヴィオレット・ノジエール』(78)とミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』(01)でカンヌ国際映画祭女優賞、シャブロル監督の『主婦マリーがしたこと』(88)と同監督の『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(95)でヴェネチア国際映画祭女優賞、フランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』(02)でベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)に輝く。さらにポール・ヴァーホーヴェン監督の『エルELLE』(16)でアカデミー賞®主演女優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。その他の主な出演作は、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手に逃げろ/人生』(79)、シャブロル監督の『ボヴァリー夫人』(91)、ハル・ハートリー監督の『愛・アマチュア』(94)、ハネケ監督の『愛、アムール』(12)、ミア・ハンセン=ラヴ監督の『未来よ こんにちは』(16)、ハネケ監督の『ハッピーエンド』(17)、ブノワ・ジャコー監督の『エヴァ』(18)、ニール・ジョーダン監督の『グレタ GRETA』(18)など。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。







『ポルトガル、夏の終わり』

2020/8/14(金) よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 他全国順次公開

(c) 2018  SBS PRODUCTIONS / O SOM E A FÚRIA (c) 2018 Photo Guy Ferrandis / SBS Productions

公式サイト:gaga.ne.jp/portugal

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