スタッフ各々に意見を聞き、編集に取り込む
Q:「編集に何か月もかける」というお話がありましたが、編集作業って「これまでに終わらせないといけない」といった〆切が設定されていたり、「大体これくらいかかるもの」という業界内の感覚があったりするのでしょうか。
古川:スケジュールに関しては、最後のダビングの日程からの逆算で引いていきます。「ピクチャーロック」といって、CGとかも含めて一旦もう触らないよ、という状態にしておかないと、次の部署に渡せないんです。そのため、「ここまでにピクチャーロックしなきゃいけないから、最初に監督に見せるのは、一番遅くともここ」みたいなものは、一応決まっています。
Q:編集期間は、大体どれくらいかかるものですか?
藤井:最近は、一番時間がなかったときは、1か月ぐらいだっけ。
古川:かな。まあ、なくてもそのぐらい。『新聞記者』(19)とか。
藤井:うん、1か月ぐらいだったよね。
藤井:『宇宙でいちばんあかるい屋根』とか『ヤクザと家族 The Family』(21)とかはかなり長くかけて、『ヤクザ~』が今までで、一番長かったかな。2か月ぐらいはやってます。
本当に早く編集しなきゃいけないときは、1か月ないこともありますし、連ドラを古川と一緒にやったんですが、結構地獄で。泊まりでやってましたね。心が先に折れました(苦笑)。
Q:その編集期間には、「差し戻し」もあるのでしょうか。
藤井:そうですね。「セミオール」といって、プロデューサーと一緒に見なきゃいけないときとか、他者の意見が入ってくるタイミングがあります。
あと、信頼する自分のチームの人たちに見せて、意見をもらう機会を設けています。「いいのは分かってるから、ダメなところを教えてくれ」っていう聞き方をして、「ここ気になりました」とか、ダメ出しをちゃんともらいますね。
例えばプロデューサーから見た映画の感じは、僕たちよりもっと客観的なので、そういう意見を取り入れながら、何度も何度もブラッシュアップしていきます。
Q:最初は、古川さんがつないだものを、藤井さんおひとりで見るのでしょうか。
藤井:基本はそうですね。最初の3回ぐらいは僕と古川の2人でやって、4回目ぐらいで大体セミオールの時期が来て、そこからはプロデューサーが入って、また何回もやり直して、「オールラッシュ(関係者を集めての試写)」に移ります。僕らにとってのオールラッシュは全然オールラッシュじゃなくて、そこからまた直して。尺のことなど含めて、結構色々な課題が入ってくるんです。
SYOさんと一緒に取材した『WAVES/ウェイブス』(19)のトレイ・エドワード・シュルツ監督も、最初に編集したやつが170分ぐらいあって、A24にゴリゴリ切られたっていう話をしてましたね。
Q:そうですね。「A24からの差し戻しが多かった」というお話を聞いていたので、藤井さんの場合はどうなんだろう?と思って。
藤井:僕の場合、逆にほとんど無いですね。『ヤクザと家族 The Family』に関しては、尺がちょっと長かったので「どうにかしなさい」とは言われましたが、そのくらいです。
『宇宙でいちばんあかるい屋根』に関しては、最初からプロデュースチームのみんなが、こちらの意見をすごく聞いてくれてたので、スムーズでした。むしろ、僕と古川の粘り腰が過ぎて、迷惑をかけちゃいましたね。