初挑戦した、CGの難しさ
Q:ここまで、藤井監督から見た古川さんのすごさをうかがってきましたが、古川さんは、藤井さんの魅力はどういう部分にあるとお考えですか?
古川:世の中的には、「藤井作品はエッジが効いてる」と言われているかと思うんですが、やっぱりストーリーだと思いますね。キャラクターの物語を語ろうとしているところが、本当に一番の魅力だと感じます。
Q:その部分は、古川さんの信条とも合致するものなのでしょうか。
古川:最初のころは、僕は編集の画の並びの気持ちよさとか、タイミングの気持ちよさを優先してしまっていたんですが、藤井組をやっていく中で、「やっぱりストーリーを語ることが一番だ」と考えるようになりました。ストーリーを語れているものを観るのが一番面白いし、自分としても、うまく語れた時が一番満足感があります。
Q:ありがとうございます。先ほども話に出ましたが、『宇宙でいちばんあかるい屋根』では、CGが入ってきています。編集的には、新たな挑戦だったのでしょうか。
古川:編集面では、手間が増えた感じはなかったですね。ただ、編集段階では、合成前のブルーバックのせいで、夜のシーンなのに真っ青が続く見づらさはありました。
でも、つないでいるのは、あくまでその手前の人物たち。だから、そこまで影響はなかったですね。「キャラクターの感情の物語をつなぐ」という観点では、今までと変わらなかったです。
Q:なるほど……。根っこは変わらず、表現の手段が増えたという感じなんですね。
古川:今話していて思い出したんですが、外の音が全くないのは、ちょっと難しかったかもしれません。ブルーバックの場合、スタジオ撮影になるじゃないですか。環境音がなく、セリフしかないというのはちょっとやりづらかった。“空気感”をつかめなくなった気がして。
藤井:現場もそうだった。
古川:ああ、やっぱりそうだったんだ。環境音があるってすごく大事な要素だったんだなって、あれで気付きましたね。
藤井:僕は今回、CGにトライしてみて、佐藤信介監督や山崎貴監督はすごい……と改めて実感しました。彼らはものすごく綿密な計算をしたうえで、カット割りを組み立てている。そして、「俺はもうブルーバックやりたくない」っていう断固たる決意をしました(笑)。