3分の1秒をカットするだけで、印象が変わる
Q:お2人が粘ったというのは、物語の展開をもっとスムーズにしたいとか、感情の動きをもっと盛り上げたい、というような観点からなのでしょうか。
藤井:もうね、細かすぎるんですよ。主人公のつばめがどうしたらもっとよく見えるかとか、ストーリーが飽きずに見られるかとかの、微差というか、表情を映したカットが1秒伸びただけで、すごくダレたとか、そういう感覚です。
古川:『宇宙でいちばんあかるい屋根』は14歳の少女が主人公ということで、最初のうちは、「ゆったりとした“間”を作らないといけない」という感覚が若干自分の中であったんです。でも、ピクチャーロックをしたあとCGが上がってきて、再度見たときに、意図的に間を作らなくても物語の推進力が維持できる部分がいっぱいあって、思い切って編集し直しました。
切ったといっても8コマ……つまり3分の1秒のカットなどを、70か所くらいやりました。録音部にすごく迷惑をかけました…。
藤井:シーンも増やしたよね。
古川:そうだね。一度はいらないって言って落としてたシーンを、やっぱりあった方がいいって、それは監督が言い出して、「え……ここで新しい素材追加するの」みたいな(笑)。でもあれは確かに、戻して超正解だった。最初に入れていたときは邪魔だなって言ってたシーンだったんですが、短くして入れたらとても際だって良くなりました。
Q:「3分の1秒」って、観客目線だとなかなかわからない感覚だと思うんです。お2人がそこに目が行くのは、観ていると“ノイズ”として浮かび上がってくるような感じなのでしょうか。どんな感覚なのか、気になります。
藤井:僕たちが約束事にしてるのは、「1日2回は絶対観ない」「必ず通しで観る」ということ。要は映画館で観客として見た時に、どこが気になったかを重視しているんです。あくまでも自分たちが作ってるのは、観客がいてこそ成立する「映画」ですから。
8コマなんて、見ててもわからないとは思うんですが、自分たちが、1コマや1カットにどれだけこだわりを持つかは、撮ってきた俳優部たちをどう良く映すかっていうことだと思ってて。
かっこつけてるような演出が編集の全てでは、絶対にない。俳優部が、どう良く映るかということが、編集と監督の一番頑張んなきゃいけないところ。清原果耶ちゃんのまばたきの前で切ろうとか、後で切ろうとか、そういう細かい調整で、受ける印象が変わってくるんですよ。