2.『地獄でなぜ悪い』(13) 監督:園子温 130分
鬼才・園子温監督の映画愛とパッションが振り切れた、バイオレンスアクションコメディ。國村隼、長谷川博己、坂口拓、星野源、二階堂ふみ、友近、堤真一という個性あふれる役者陣が集い、「ヤクザの討ち入りを撮影し、映画化する」という斬新なストーリーが展開する。
本作のストーリーラインは、大きく分けて3つ。「最高の映画を撮りたい」と願う映画狂の男・平田(長谷川博己)の青春の日々から現在にかけて、敵対するヤクザ・武藤(國村隼)と池上(堤真一)の抗争、武藤の娘・ミツコ(二階堂ふみ)に巻き込まれたごく普通の一般人・公次(星野源)の受難だ。
出演陣の体を張った演技が大きな魅力だが、ヤクザの討ち入りに参加することになってしまった公次をコミカルに演じた星野の活躍ぶりは、ことさら強烈だ。ボコボコに殴られ白目をむく、ヤクザに囲まれビビりまくる、口から大量のゲロを吐く、コカインまみれになりハッスルする、血まみれになりながら絶叫するなど、これでもかという怒涛の勢いで魅せる。
役どころとしても、唯一といっていい「観客に近い常識人」であり、星野の「え…えぇ……」というような“引き”の反応が、攻め気味の作品の中で観客を置いてけぼりにさせない重要な“錨(いかり)”になっている。星野は、本作で主題歌も担当した。
園監督らしい、グロも暴力もエンタメに変える作風は、海外でもヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭、ファンタスティック映画祭等で上映され、高評価を得たという。トロント国際映画祭では、ミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞した。
なお、星野は声優活動も積極的に行っているが、同年には人気漫画をアニメ化した『聖☆おにいさん』(13)も公開された。星野は本作でも、主題歌を担当している。
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