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映画監督、その未来は?『ミッドナイトスワン』内田英治監督が語る“日本映画界のリアル”【CINEMORE ACADEMY Vol.8】

映画監督、その未来は?『ミッドナイトスワン』内田英治監督が語る“日本映画界のリアル”【CINEMORE ACADEMY Vol.8】

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役者とじっくり信頼関係を築けない環境



Q:評価だけではなく、ヒットもさせる、つまり興行として成功させることが、そういった流れを加速させる布石にもなりますよね。ビジネス的に成立させるというか。


内田:メジャー大作と低予算の映画の間……大体製作費7,000万円前後くらいの作品が、最も儲からないと言われていて、敬遠されるんですよね。でもこの間のミドルバジェットこそ、商業的であり、実験的でもある作品を作る唯一の場だと思うんです。


僕は『下衆の愛』で製作費500万という最低額、『全裸監督』でおそらく日本では最高額、どっちの現場も経験していますが、やっぱりいまお話ししたゾーンの作品が、一番難色を示される感があります。ただ、僕はそこをやりたい。かつ、いい役者にも出てもらいたい。最上の演技をもって、挑戦的な題材を撮りたい。


役者と監督の関係も、正常に戻したいと思っているんですよ。


Q:と、いうと?


内田:今って、ひどい現場だと監督と俳優の信頼関係が全くないものもあって、現場で初めて会ってハイ本番、みたいなものもざらなんですよ。


『ミッドナイトスワン』は、草彅さんが脚本を読んで「面白い」と言ってくださってすべてが動き出したから、その時点で役者との信頼関係が生まれている。実際、2人でじっくり話して作り上げられましたし。


もう少しクリエイティブに時間をかけて、役者とじっくり人間関係を築いて役柄について話し合うっていう、ただただ当たり前のことをちゃんとやれば、映画界ももっと変わっていくんじゃないかな、とは常々感じています。




Q:役者さんがみんな忙しすぎて、衣装合わせのときに監督がガッと話を詰めなきゃいけないというのは聞いたことがありますし、山田孝之さんも以前、役作りをする時間が十分にとれないという俳優側の現状を発言されていましたね。


内田:役者さん自身は、やっぱりきっちり準備してちゃんと演じたいと思っているものだから、歯がゆいですよね。


僕はいま開発している別作品も、『ミッドナイトスワン』と同じく、とある俳優さんが脚本を読んで「ぜひ出たい」とおっしゃってくれたんです。やっぱり、役者たちはちゃんと芝居ができる場を求めているんですよ。


舞台だったらリハーサルに時間をもらえるかと思うのですが、映画で1週間リハに欲しいといったら、事務所からOK出ないですもんね。「まさかボランティアじゃないですよね」となってしまう。でも、ちゃんと時間をもらえれば、結果的にいい芝居が生まれ、いい作品になる。そのほうが事務所的にも、役者のプロデュース面でも成功だと思うんですけどね。


この問題点は映画製作者みんなの頭にあるけど、どうしようもないから目をつむる、という状態になっていますよね。ただ、だからと言ってこっちが黙るのは違う。この部分は、これからも訴えていきたいと思います。


その際に説得力を生むためにも、『ミッドナイトスワン』で結果を出したい。せっかく草彅さんが出演して、こんなにいいものができたわけですから。



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