現場をマネジメントするのも、監督の役目
Q:プロデューサーさんによって、撮影現場にどう関わるかも変わりますよね。吉村さんはいかがでしたか?
吉村:そうですね……(考え込む)。
大森:「来なくていい」って言ってるのに、毎日のように来てたよね(笑)。
吉村:こんな感じでした(笑)。プロデューサーと監督って、撮影に入る前にいろいろ話し合って詰めているじゃないですか。予算とか脚本とかキャスティングとか……。だから、撮影がインしてからアップするまでは、スタッフさんや俳優さんの領域だと思っています。
僕は時々俳優さんの送り迎えをしていたくらいです(笑)。
Q:それでも現場に行かれたのは、何かトラブルとかがあったときに動けるように、常に控えていよう、という意識でしょうか。
吉村:そうですね……。そういう気持ちも多少はありましたが、幸いそんな瞬間は1回もなかったですね。
大森:俺の現場が楽なんだよ(笑)。プロデューサーがめっちゃ大変な現場もあるんだから。
Q:大森監督は、現場の雰囲気づくりは結構気を配られるタイプでしょうか。
大森:すごく気を付けますね。スタッフの空気が悪いと、俳優にも伝わるんです。僕たちが思っている以上に、俳優はこっちをちゃんと見ていますからね。
だから、カメラワークもカット割りのイメージも事前にカメラマンと細かく共有しますし、とにかく事前にコミュニケーションを密に取って、「何が起きても大丈夫」なくらいに完璧にしておきますね。
僕は昔、助監督もやっていて、やっぱり疲れた現場っていいことないんですよ。現場がうまく機能するように計算して、立ち回るのが監督の役目じゃないかと思っています。
吉村:大森組はやっぱりスタッフの皆さんとのチームワークがすごくいいから、僕が出しゃばらなくてもスムーズに回っていたんです。だから「来なくていいよ」ってなったという(笑)。
Q:今日はたくさんお時間をいただき、ありがとうございました。最後に、映画監督とプロデューサーの今後の課題について、伺えますでしょうか。
大森:ちょうど先日、「ぴあフィルムフェスティバル」の審査員をやっていたんです。若い子の中にも感覚が鋭い人たちはたくさんいるから、その才能を大きく広げていくプロデューサーがもっと出てきてほしいなとは思いますね。
いまのままだと尖りすぎて、昔の俺みたいになっちゃう子たちを、うまく才能を生かしつつ、導いてあげるというか。そうできたら、もっと豊かになっていく気がしますね。
吉村:やっぱりいまの日本映画の作られ方だと、力強いプロデュースワークは構造的に生まれづらいのかもしれません。個人的な課題はスピード。映画製作は時間がかかります。その中で、あまり物語やプロット至上主義に囚われすぎない映画作りをしていきたいと思います。
『星の子』を今すぐ予約する↓
監督・脚本:大森立嗣
1970年生まれ、東京都出身。大学時代に入った映画サークルがきっかけで自主映画を作り始め、卒業後は俳優として活動しながら荒井晴彦、阪本順治、井筒和幸らの現場に助監督として参加。2001年、プロデュースと出演を兼ねた奥原浩志監督作『波』が第31回ロッテルダム映画祭最優秀アジア映画賞“NETPAC AWARD”を受賞。その後『赤目四十八朧心中未遂』(03)への参加を経て、2005年『ゲルマニウムの夜』で監督デビュー。第59回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門、第18回東京国際映画祭コンペティション部門出品など多くの映画祭に正式出品され、国内外で高い評価を受ける。二作目となる『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)で第51回日本映画監督協会新人賞を受賞。第60回ベルリン国際映画祭フォーラム部門、第34回香港国際映画祭に正式出品。その後、『さよなら渓谷』(13)がモスクワ国際映画祭のコンペ部門に出品され、日本映画としては48年ぶりに審査員特別賞を受賞する快挙を成し遂げる。さらには、『さよなら渓谷』『ぼっちゃん』(13)で第56回ブルーリボン賞監督賞も受賞。また『日日是好日』(18)では、第43回報知映画賞監督賞を受賞する。その他の監督作として、『まほろ駅前多田便利軒』(11)、『まほろ駅前狂騒曲』(14)、『セトウツミ』(16)、『光』(17)、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(18)、『タロウのバカ』(19)、『MOTHER マザー』(20)などがある。
プロデューサー:吉村知己
1974年、東京生まれ。1998年に(株)ギャガ・コミュニケーションズ(現・ギャガ株式会社)に入社。宣伝部に配属し、劇場公開映画の宣伝に10年間携わる。2009年に(株)ヨアケを設立。『日日是好日』(2018年 日本 監督:大森立嗣)を企画・プロデュースする。その他の主な企画作品として『都会のトム&ソーヤ』(2021年以降公開予定 監督:河合勇人)が控える。
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
映画『星の子』
2020年10月9日(金)公開
配給:東京テアトル、ヨアケ
(c)2020「星の子」製作委員会