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『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

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後進たちの“黒沢監督愛”が止まらない



Q:(笑)。濱口さんと野原さんの、黒沢さんへの愛が非常に伝わってきますが、黒沢さんはこれまでの作品でも、後進の方々と組まれる機会が多いですよね。この部分の想いを、ぜひ伺いたいのですが……。


黒沢:「若い人を育てよう!」といったお題目は自分の中では全くないのですが、才能がある、信頼できる、そしていい奴である(笑)……色々な理由で、近くにいるとうれしい人たちを引き入れてはきましたね。


でも今回は、真逆なんですよ。後進の子たちが僕を引き入れてくれた。こんな日が来るとは思わなかった。僕もいろんな商業映画に携わってきましたが、こんなにおいしい企画が舞い込むことって、まずないんです。


濱口:やったね、野原くん。


野原:いやぁ……そう言っていただけて、本当にありがたいです。勇気をもって東京藝大にメールしてよかった(笑)。


黒沢:野原は監督であり脚本家であり、プロデュース能力もある。びっくりしましたね。彼らのコネクションの中で、プロデューサーたちも集まっていますし。


濱口:でもみんな、大前提として黒沢さんのファンだから集まってくれたんですよ。「黒沢さんならいっちょ噛みたい」という気持ちだったのではないかと想像します。僕自身がそうでしたから。


野原:みんな、「黒沢さんに自由に撮ってほしい」という共通認識がありましたよね。



今回のインタビューはオンラインで実施


Q:ちょっと脱線しますが、黒沢監督がフランス・ベルギー・日本合作の『ダゲレオタイプの女』(16)を撮影された際、現地のスタッフが「黒沢さんならこう撮る!」と用意して待っていた、というエピソードを思い出しました。


黒沢:長く続けてみるもんですね。第一線で活躍されている後輩の方々が、こっちは忘れていても「あの映画のあのシーンみたいに撮ってください」と言ってくれる。


『ダゲレオタイプの女』のときは、フランスだからやっと外で自由に撮られるぞ!と思っていたら、現地のスタッフの方々が「車の運転シーンは、当然スクリーン・プロセス(※スタジオ内にスクリーンを張り、背景映像を投影した状態で合成撮影する技法。黒沢作品では、運転シーンでよく使用される)ですよね?」と待ち構えていたんですよ。


濱口:(笑)。


野原:「自由に撮っていただきたい」と言いつつ、ファンの欲望が……(笑)。


Q:本作もそうですが、多くの方が「黒沢さんと映画を作りたい!」と集って、そのうえで「いいものを作ろう」とする関係性って、素晴らしいですね。


黒沢:僕自身、結構頑張って目新しいチャレンジをしてきて、自分としてもかなりのことをやってきたなという自負がなくもないんです。ただ、その割に世間的には認められない(苦笑)。


そんな中で、「自分だったらこういうことをやらせたい」「認めてもらえるようにしたい」と思ってくださる方々が、今回のように声をかけてくださる。おかげで今回は、ひょっとしたらいままでのキャリアで一番世間に知られる作品に出合うことができました。



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