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『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

『スパイの妻』を作った師弟愛。黒沢清・濱口竜介・野原位インタビュー【Director's Interview Vol.84】

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『いだてん』直後に黒沢映画のカラーに合わせた撮影部



野原:ごめんなさい、滅多にない機会なのでもう1つだけ……。撮影に関しても、今回はNHKのスタッフの方々が中心ながら、完全に「黒沢映画」に見える。どうやってイメージを伝えていったのか、すごく聞きたいです。


黒沢:どうやら、事前に色々と調べてくださって、これまでに僕がご一緒したスタッフにリサーチして、多分「あの人はこういうのが好きだよ」とか聞いてきたんじゃないかな。


実は、彼らは直前まで大河ドラマ『いだてん』の撮影を行っているんですよ。多忙を極めているから、ロケハンに演出部と制作部しかいない、というような日もあって事前の打ち合わせがほとんどできず、始まる前はものすごく不安でした。でも、彼らもそれをわかってくれていて、すごく勉強をしてくれていたようなんですね。




濱口:8Kだと、フォーカスを合わせるのも大変そうですよね。


黒沢:それも面白くて、『スパイの妻』のスタッフの方々は大河ドラマという大がかりだけれどスケジュールがタイト、という現場に慣れているから、いきなり本番でフォーカスを合わせられるんです。スポーツ中継とかも経験されているのかもしれませんね。


濱口:それはすごい。


黒沢:僕もびっくりしました。1・2回テストをして、或いはテストをせず長回しになっても、「全然問題ないです」と。「どこに俳優が来るかわかりませんよ」と言っても「大丈夫です」とおっしゃって。たまにフォーカスがボケることもありましたが、僕はそれを面白がって使ったりしています。


野原:皆さん、「黒沢監督作品だから」と気合が入っていたのかもしれませんね。


濱口:もともとの形式としては特別ドラマでしたが、意識としては映画ですもんね。


黒沢:僕も映画ばっかり撮っているし、そもそも「ドラマ」と言われても「映画」との違いがよくわからない。ただ、彼らからすると「今回はドラマじゃなくて映画」なんですよね。そういった気合は確かに感じました。


野原:きっと皆さん、今回の銀獅子賞の受賞を喜ばれたでしょうね。


黒沢:そうですね。「映画をやってよかった」と思ってくださっているんじゃないかな。



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