アイヌの精神世界の集大成「イオマンテ」を描く
Q:アイヌの伝統行事、イオマンテ(※)が物語の核となっていますが、イオマンテをストーリーに盛り込むかどうか、監督はかなり迷われたそうですね。
※イオマンテ:「熊送り」の儀式。捕獲した小熊をアイヌの共同体の中で1~2年育て、「熊の中に宿る神」をもてなす。熊は儀式の中で屠殺されるが、宿った神は、神の国に帰るとされる。
福永:イオマンテがインパクトがあるからという理由で題材として選んだわけではなく、それが内包しているものを通すことで、色々なものを描けると思ったので選びました。イオマンテについてはアイヌの中でも賛否両論あるし、また外部からの反対もある。いろんな理由があってずっと行われていない行事なんです。
Q:現在、イオマンテは全く行われていないんですか?
福永:ないです。記録として残っているのは30年前に行われたものが最後です。ただイオマンテはアイヌ文化、精神世界の集大成と言われているとても大事な儀式で、本当にいろんなものが凝縮されています。
現代のアイヌを描く中で、様々な考え方や想いだとか、世代間のギャップとか、過去と現在の差とか、そういうものを本当に凝縮して描ける題材が他に見当たらなかったというのが正直なところです。ただすごく繊細なことなので、描写の仕方にはすごく気をつけました。