「芸術性もあって大衆性もあるのが映画として理想」
Q:全体にテンポよく、かなりコンパクトにまとまっていて見やすい印象でした。普通だと監督自身でシーンやショットをカットしづらいと思うのですが。
福永:僕、そういうのないんですよ。仕事で編集もやってきているので、その影響かもしれませんが。もちろん思い入れがあって残したいショットはいっぱいあるんですけど、わりと一歩引いて客観的にバッサリ切れるので。
Q:非常にオーソドックスなエンターテインメントを志向する意識を感じました。
福永:映画ってギャラリーで見せるものではなく、映画館で見せる大衆芸術なので、やっぱり間口は広ければ広いほどいい。芸術性もあって大衆性もあるのが映画として理想だと思うんです。
キューブリックにしてもポール・トーマス・アンダーソンにしても、芸術性も素晴らしいけど、ちゃんと大衆の方を向いていて、エンターテインメントとしても素晴らしい。僕はできるだけ、そういう作品作りを目指したい。テーマとか、もちろんやりたいことはやりますけど。その中で出来るだけ外に広げて作りたいなと。自己満足に陥っては映画でやる意味はないと思うので。
Q:本作を未見の方には、アイヌを題材にした固い映画だと思ってほしくないですね。
福永:アイヌという題材だと、「知識がないと見ちゃいけないのかな」とか「重い話なのかな」って身構えちゃう人もいると思うんです。でもそうじゃなく、つまるところ少年の成長していく物語なので、誰しも共感しながら見られると思います。アイヌの映画とか、そういうのを意識せず気軽に見てもらえたら嬉しいですね。
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監督・脚本:福永壮志
北海道出身。2003 年に渡米、映像制作を学ぶ。ニューヨークを拠点に活動後、2019年に東京に拠点を移す。初⻑編映画『リベリアの白い血』(原題:Out of My Hand)は、2015年にベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品され、ロサンゼルス映画祭メインコンペティション部門で最優秀作品賞を受賞、サンディエゴ・アジアン・アメリカン映画祭で新人監督賞を受賞する。その後同作は、映画監督のエイヴァ・デュヴァーネイによる配給会社 ARRAY からアメリカで劇場公開され、2016 年にインディペンデント・スピリットアワードのジョン・カサヴェテス賞にノミネートする。日本では 2017 年に劇場公開。⻑編映画二作目となる本作は、カンヌ国際映画祭主催のシネフォンダシオン・レジデンス等に選出された後、トライベッカ映画祭で審査員特別賞、グアナファト映画祭で最優秀作品賞を受賞。アメリカのThe Gersh Agencyと、イギリスの42 Management and Productionに監督/脚本家として所属。
取材・文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
『アイヌモシㇼ』
10月17日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
(c)AINU MOSIR LLC/Booster Project
公式HP: ainumosir-movie.jp