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『きみの瞳(め)が問いかけている』誰よりも、役者を魅力的に撮る。三木孝浩監督の秘めた“美学”【Director's Interview Vol.87】

『きみの瞳(め)が問いかけている』誰よりも、役者を魅力的に撮る。三木孝浩監督の秘めた“美学”【Director's Interview Vol.87】

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三木監督流・「役者の美しい撮り方」とは



Q:個人的に、これまで三木監督の作品を拝見してきて、娯楽性と監督のカラーというか、ある種の作家性の配分が見事だなと感じています。


三木:本当ですか? 逆に自分では、「作家性がない」と思っているんですよ(笑)。


Q:そうなんですね!


三木:MVのディレクター時代から意識していることでもあるんですが、その曲やアーティストにとって最善のもの――「最も魅力的に見える映像はなんだろう?」という発想で作るんです。


例えば“俺印”じゃないですが、「自分が撮るからここはこうする」みたいな作家性を意識して「だからこう作りたい」という感覚はないんですよね。映画の場合も、「この物語をお客さんに楽しんでもらう上で、最善の映像・最善の撮り方・最善のキャスティングは何だろう?」という部分が主体なんです。


Q:面白い……! ただ、三木監督の作品の共通の特長として「役者さんを美しく魅せる」はあるんじゃないかと思います。


三木:あぁ、確かに。もちろんストーリーテリングも大事ですが、「まず美しく撮る」は自分の中で、命題にしているかもしれないです。




Q:『きみの瞳が問いかけている』も、吉高さん・横浜さんの美しさを余すところなく撮っていると感じたのですが、三木監督流の「美しい撮り方・魅せ方」はどんなアプローチによって生まれるのでしょう?


三木:ライティングとヘアメイクもかかわる部分なので、現場で作っていきます。吉高さんとは『僕等がいた』でもご一緒していますが、当時とはスタイリングもヘアスタイルも違いますし、今回のキャラクターといまの吉高さんだったら、どう魅力的に見えるか、を重点的に考えますね。


例えば明香里だったら、「事故で目が見えなくなる」という悲運に見舞われても明るい部分が際立つから、特にオープニングではその部分を多めに見せていこうと、本人と話しながら作っていきましたね。


横浜くんの場合も、過去作も観つつ、今回のキャラクターでしか出せない彼の魅力は?と考えました。まずはやはり「格闘技」という特技があるので、本人のもともとのポテンシャルを生かしつつ、「今回は全開で行きましょう」とお話ししましたね。


Q:撮る角度なども、現場でご本人を見つつ、調整していく形だったのでしょうか。


三木:そうですね。モニターに映る姿と実物って微妙に印象が異なる部分もあるのですが、横浜くんの場合は、横顔がやっぱり美しい。じゃあこの横顔のラインをどう画面の中で美しく魅せるか?という風なプロセスで、シーンを考えていきました。


ただ難しいのは、美しいだけだとキャラクターが入ってこなくなる。優先順位としてはキャラクターに重きを置いて、そのうえでどう魅せるか、が重要なんです。


横浜くんは今回、目が見えるか見えないかのヘアスタイルですが、そこには過去の罪を背負っているから人目に触れたくない、というキャラクターの心情がある。そこから逸脱してしまうと、今度は映画として成立しなくなってしまうんです。そこでヘアスタイルはキープしつつ、ちょっと目が見えるアングルから撮ることで「あ、塁が心を開いたな」と感じられるようにしました。


人って、右側の表情と左側の表情はシンメトリーではないんです。それによって観る側の印象も異なってくるので、試行錯誤しつつ……。そうすると、自然と立ち位置も決まってくるんですよ。横浜くんの場合は、気持ち右側から撮っているほうが多いんじゃないかな?



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