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第33回東京国際映画祭 Japan Now部門 深田晃司監督 映画祭には市場原理とは別の評価軸を与える公的意義がある【Director's Interview Vol.89】

第33回東京国際映画祭 Japan Now部門 深田晃司監督 映画祭には市場原理とは別の評価軸を与える公的意義がある【Director's Interview Vol.89】

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映画祭によってキャリアが拓ける可能性



Q:『ほとりの朔子』ではナント三大陸映画祭でグランプリ(金の気球賞)を獲られて、一気に日本でも深田監督のお名前が報道されるようになった印象があります。海外で認められて日本に凱旋するという流れは、映画監督にとって一つの成功への筋道のように思いますが、深田監督が海外の映画祭に呼ばれるきっかけは何だったんでしょうか?


深田:最初のご縁は、『東京人間喜劇』をローマ国際映画祭に選んでもらったことでした。その時に、おぼろげに国際映画祭というものがあると知り始めていて。その頃、ユニジャパン(注:東京国際映画祭を開催するほか、日本映画・映像コンテンツの海外展開支援を行っている公益財団法人)が映画の「ライブラリー」というものを持っていて、そこに自分の作品を預けると、世界の映画祭のプログラマーが日本に来た時に、作品探しができるような制度があったんですね。その後、その制度は無くなっちゃったんですけど。


それで『東京人間喜劇』に英語字幕を付けて託していたら、ローマのプログラマーが観てくれて、招待したいと言ってもらったんです。実はその前に、短編の『ざくろ屋敷』がパリのKINOTAYO現代日本映画祭で賞をもらっているんですけど、それは日本映画の映画祭で、国際映画祭ではなかった。だからローマが自分にとって初めての国際映画祭だったんですけど、その時は本当に物見遊山気分で、渡航費を出してもらって映画祭に行けるっていうことに浮かれて終わりました(笑)。


でも、それからだんだんと、映画祭というのが映画業界の裏側でひとつのシステムとしてどうも機能しているらしいというのを、学び始めていった感じでした。その後、東京国際映画祭で『歓待』が賞をもらえたことで、一気にいろんな映画祭の方に知ってもらえたのが大きかったですね。



Q:つまり、東京国際映画祭に出品されることで、世界への扉が開ける可能性があるってことですか。


深田:それはそうですね。映画祭同士のネットワークがあるのと、映画祭で賞を獲ることでニュースとして世界に配信されますし、そこからさらに新たな映画祭に呼んでもらえるってことは実際に起きるんです。


自分の話で言えば、東京国際映画祭にしてもカンヌにしてもナントにしても、そのおかげでフランスとの合作はすごくやりやすくなりました。日本は助成金も少なく、映画製作への寄付も少ない。その中でインディペンデントで映画を作るとなると、いくつか方法はあると思うんですけど、その多くは、市場に合わせて内容を変えていくことになると思うんですね。


でも、そうしないために、自分の作りたいもの作っていくために、自分のやり方としては海外との合作が役に立っています。やっぱり映画祭を通じて自分の作品を知ってくれている海外のプロデューサーもいますし、インドネシアと合作した時にも、自分がある程度映画祭で評価されている監督であるってことがフックにはなりました。


Q:『淵に立つ』と『よこがお』(19)のポスプロ作業はフランスですよね?


深田:はい。『淵に立つ』と『よこがお』はフランスの助成金を取っていたので。監督によっても違うと思うんですけど、ある種のスタンダードな方法として、『ほとりの朔子』という作品がナント三大陸映画祭でグランプリをいただいた時に、現地でフランスの配給会社の方々と知り合ったんです。そこで『ほとりの朔子』を観たシュルヴィヴァンスという会社がフランスで配給したいと申し出てくれた。それがフランスでも実績になって、『淵に立つ』でMK2っていうワールドセールスの会社が座組に入ってくれた布石になっているわけです。


Q:ポスプロを海外でやることで、作品の中身やクオリティに変化が生じていると思いますか?


深田:それは生じているはずです。ただ、フランスでやるから日本でやるからっていうよりも、人間が変わるからだと思うんですけど。フランスでやるってことに関して言うと、理由はいくつかあるんですね。ひとつには、日本の文化圏ではない視点を入れることがクリエイティブ的に面白いというのがある。またフランスの助成金は、基本的に半分以上はフランス国内でしか使えないんですね。でも、大抵助成金が下りる時期には撮影の座組は固まっているので、いきなり「カメラマンをフランス人にします」なんてことはできない。コミュニケーションの問題もあって簡単ではないですし、現実的に助成金を有効活用するためにも、ポスプロを海外でやるという流れになっています。



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