コロナ禍から生まれた2本の新作短編
Q:今回の上映作品には、コロナ禍の中でリモートで作った短編もありますよね。あれもご自身から発信されたのでしょうか?
深田:ネタ自体は自分からですけど、もともとはきっかけをもらっていて、ひとつは『move / 2020』という作品で、SHINPAという若手の映画監督のグループの二宮健監督からオファーを請けました。「在宅映画を作りませんか」と言われて乗っかったという感じですね。
『ヤルタ会談 オンライン』(20)に関しては、トライベッカ映画祭が主導して、まさに東京国際映画祭も参加していた「We Are One: A Global Film Festival」っていうデジタル映画祭があって、本当にコロナが厳しかった5月頃にオファーをもらったんです。最初は旧作を流せないかという話でした。YouTubeにアップされるってことだったので、製作委員会が絡んでいる長編映画は難しい。だからなにか流せる短編はありませんかという話だったんです。
その時に、ちょうど『ヤルタ会談』って演劇(作・演出:平田オリザ)がムチャクチャzoom向きだと思っていたんです。かつ、zoomで演劇を撮影するって、おそらく来年にはもう陳腐化しているだろうと思ったんですよね。なので、やるんだったら今しかないというがあって、東京国際映画祭の方に「新作でもいいですか?」と聞きました(笑)。
たまたまプログラマーの方も『ヤルタ会談』の舞台を観てくれていたので、それは面白いですねと言っていただいて急遽作れたという感じでした。極めてzoom演劇的なものではあるんですけど、それも今しかできないかなと。
Q:その2020年の今しかできなかったものが、2020年のうちにスクリーンでかかるわけですね。
深田:そうですね。このコロナ禍のうちにスクリーンで上映できることもよかったです!
監督:深田晃司
1980年生まれ。2006年『ざくろ屋敷』を発表。パリ KINOTAYO 映画祭ソレイユドール新人賞受賞、2008 年『東 京人間喜劇』を発表、ローマ国際映画祭選出。2010年、『歓待』を発表、東京国際映画祭「日本映画・ある視点」 部門作品賞、プチョンファンタスティック国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞。13年『ほとりの朔子』でナント三大陸映画祭グランプリ受賞。2016年日仏合作となる『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 審査委員賞を受賞。2017年第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2018年フランス芸術文化勲章 「シュバリエ」を受勲。 2019年7本目となる長編映画『よこがお』(日仏合作)を発表。『本気のしるし』は初のテレビドラマ監督作であり、劇場公開用に再編集された《劇場版》が第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020に選出された。
取材・文:村山章
1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
<東京国際映画祭>
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