田中裕子、初顔合わせで歌まで作ってくる
Q:田中裕子さんの出演の経緯について教えてください。
沖田:脚本完成後に、プロデューサーと話して出てきたのが、田中裕子さんでした。桃子さんの年齢からすると田中さんはまだちょっと若いのですが、田中さんが演じてくださることを考えると、すごくワクワクしてしまったので、もう田中さん以外では考えられなくなってましたね。
Q:田中さんと最初に会われた時はどんな感じでしたか。
沖田:劇中、桃子さんが歌うシーンがあるのですが、田中さんは実際にどんなシーンになるのか熟考されていました。そのシーンは、桃子さんの一人の寂しさを際立たせるために作ったシーンでして、面白いかなと思って歌謡ショーみたいなものにしていたんです。歌の内容はまだ決まってなかったのですが、そこを何と、田中さんが考えてきてくれたんです。初対面の打合せだったのですが、実際に歌ってくださって、僕らは慌ててiPhoneで録音しました(笑)。
Q:やる気も準備も万端ですね。
沖田:と言うよりも、自分が何をやればいいのか不安だからと、作ってきてくれたみたいです。「こういう感じだったらどうかしら」って歌ってくださるとは、夢にも思っていませんでした。その歌を元に、音楽の鈴木正人さんが曲にしてくれて、クランクインの前に歌録りをしました。
Q:今回の田中裕子さんもそうですが、役所広司さんに、山崎努さんや樹木希林さんなど、沖田監督は大御所俳優の方々とのお仕事が多いですよね。みなさん普段のペースで演じているように見えるのですが、なんだかんだ見事に沖田映画にハマっている気がします。
沖田:皆さん共通しているのは、僕の好きな世界でやりたいって言ってくださるんです。今回の現場では、芝居のニュアンスが田中さんと僕で食い違う時もあったのですが、監督が考える方向で行きたいと、田中さんは頑張ってくださいました。僕としては嬉しいのですが、田中さんが言うことを大事にしたくなる時もあったりして、どっちがいいのか分からなくなる時がたまにあるんですけどね(笑)。
俳優さんって脚本の面白いところをしっかり察知して、ここはこうした方がいいんじゃないかなって、提案してくれるんです。そしてそれは、いつも正解なことが多いですね。