沖田映画の雰囲気を作る安宅紀史の美術
Q:スタッフィングにもついてもお聞かせください。今回の撮影は近藤龍人さんで『横道世之介』以来ですよね。
沖田:今回は『横道世之介』を撮ったスタッフの皆さんでやろうと、プロデューサーの西ヶ谷さんと話しまして、その流れで近藤さんにお願いしました。
Q:沖田監督の映画って美術もすごくいいなって思ってました。今までも今回も安宅紀史さんで、沖田映画の美術を担当されているのは、ずっと一貫して安宅さんなんですね。
沖田:そうですね。安宅さん大好きなんです。
Q:今回も桃子さんが住んでいる家のリアリティがものすごくて、個人的に自分の実家にしか見えませんでした。本当に自分の母親が住んでいる感じに似てて、部屋の隅に本が積み上がっている感じなんか、とてもいいなぁと思いました。
沖田:安宅さんって、僕だけじゃなくて多分いろんな監督さんの雰囲気を作ってますよね。見えないところまで飾ろうとすると言うか、こんなことを言うとおこがましいですけど、とても信用してるし尊敬しています。
Q:今回の映画では場面転換が多くて、部屋がいろんなところにつながる重要な装置として機能しています。安宅さんとはどのように話して進められたのでしょうか。
沖田:今回は仕掛けがたくさんあるので、美術さんも大変だったと思います。部屋の手前が現在で、奥が過去になっているような見せ方は、セットならではだったなと。こういう演出ができる映画ってあまりないから、今回はやってて面白かったですね。
また、桃子さんが昔の家に戻るシーンを撮ったんですけど、その家は具体的に作らずに骨組みだけで構成されていたんです。まるで寺山修司さんの舞台みたいになってて(笑)、それも最初どうかと思ったんですけど、撮ってみたら意外と面白かったですね。生活のリアリティもそうですし、色々作ってくれるのは本当に嬉しいです。うちの実家をモデルにしたので、小道具を実家から持って行ったりもしました(笑)。
Q:家には庭がついてるし、部屋もリアリティ があるし、どこまでがセットでどこからがロケ先か全く分からなかったです。
沖田:境界線が結構難しくて、玄関先から居間、客間はセットで、窓際付近は実際の家ですね。かなり複雑でした。カットによってうまく分けてました。
Q:アングルや俳優さんの動線を決めるのが難しそうですね。
沖田:ロケハンをしている時に、ある程度こう動くだろうなと想像はしているのですが、まあそれはあくまでこちら側の想像なので、、もし俳優さんが別の動きをしたとしてもその時悩めばいいかなと。でも、俳優さんってみんな達者な人が多いから、何となくアングルを察知しなが動いてくれるんですよね。