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『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督×細川岳 エンターテインメントから逃げないと決めていた【Director’s Interview Vol.96】

『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督×細川岳 エンターテインメントから逃げないと決めていた【Director’s Interview Vol.96】

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役者と一緒に泳ぐ監督



Q:一見、佐々木のキャラクターが強すぎて、悠二をはじめ他のキャラクターが霞んでしまうように思えるのですが、全くそんなことはなく、映画における悠二の存在感はとても印象的で、佐々木・悠二・多田・木村の四人の立ち位置も明確です。役者さんたちそれぞれの演技はもちろん素晴らしいのですが、監督として、どのようにこの役者たちを配置して動かしていったのでしょうか。


内山:まず、季節だけに限って言うと、彼は悔しい気持ちやそのエネルギーみたいなものを、ひしひしと内に秘めている人間なんです。そこが良いところなんですけどね。また、彼がこれまで演じてきた役は、そのエネルギーを発散することが多かった。それに対して今回は逆で、それを怖いぐらいに抑える必要がある。キャスティングしてから撮影までの1年ぐらいの間、そんなことをずっと季節と話していました。


こうやって1年近くやり取りして、無駄にみたいに思える時間も全て共有することで、何でも言える関係になっていく。とにかく役者とは一緒にいる時間を多く作るようにしています。僕はその準備の時間が一番大切だと思っていますね。


『ヴァニタス』から共通しているのは、とにかく時間をかけて役者一人一人と話していくこと。そこでは、役に対する共通認識と、役に対する個別の認識、この二つについて主に話しています。会議室でも居酒屋でも、とにかく時間を共有して、その役者と僕との関係づくりをしていく。そのためにはいくら時間をかけることも厭わないですし、とにかく同じ目線にいることを共有していきたいんです。役に対して何かこうしてくれと指示することは全く無くて、ただただ共有することに重きを置いています。


細川:確かに。内山の強みはそれだと思う。そこはめちゃくちゃ強い。


Q:内山監督独自のアプローチが、そのまま彼の強みになっていると。


細川:そうですね。ちょっと特殊ですよね。役者と認識共有するためにかける時間が尋常じゃない。撮影に入るまでに、役者としてどれだけのものを作るかは、すごく大事だと思っているんですが、内山はそれを同じ目線で入ってきて与えてくれるんです。だからみんなの気持ちがどんどん同じ方向に向いていく。今までそういう監督にはあまり出会ったことがないので、それはやっぱり強みですよね。



 

Q:監督として指示するのではなく、あくまで役者と同じ目線で話をしていくんですね。


内山:はい。失礼かもしれないけど、それは年齢関係なくやっていますね。今回も、大先輩の鈴木卓爾さんにも同じアプローチをとりました。岳に言われたのは、25mプールがあるとすると、ゴール地点で綱を引っ張ったり声をかけてくれる監督はたくさんいるけど、一緒に泳いでくれる監督は内山だけだと。確かに僕も一緒に入水して、足がついてもいいから一緒に最後までゴールを目指そうよって。もしかしたらゴールなんてないかもしれないけどって。そうやってるかもしれませんね。


ゴールの景色は僕にもわからない。結果はどうなるかわからないけど、一緒にその景色を見に行こうよって、そんなことを言っていると思います。


細川:ちょっとだけ前を泳いでいて、導いてくれている感じはあるよね。


内山:そう言ってもらえると、すごくありがたいですね。


Q:役者さんに対してのアプローチはそうありつつも、映画全体に対する監督としてのビジョンも必要ですよね。それが今言ったちょっとだけ前にいるということなのでしょうか。


内山:そうですね。そうだと思います。内山監督はずっと孤独だったって、季節によく言われました。役者との時間をかけるのも決して馴れ合いではなくて、基本的に現場では一人でいようとしています。全体を俯瞰する視点と、役者と同じ視点を使い分けつつ、なるべく客観視していこうと思っています。ただ、客観視をして面白くなくなってくる部分は、主観に切り替ええないといけない。実際にどれだけできているかはわからないですが、作品を作るときは、なるべく神の視点みたいなものを持とうとはしています。



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