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『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督×細川岳 エンターテインメントから逃げないと決めていた【Director’s Interview Vol.96】

『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督×細川岳 エンターテインメントから逃げないと決めていた【Director’s Interview Vol.96】

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徹底的に準備して、現場で壊す



Q:実際の現場の様子もお伺いしたいのですが、とにかく劇中の会話がリアルで、セリフを喋っている感覚が全くなく、みんなその場で普通に会話しているように見えました。セリフは脚本通りだったのでしょうか。それとも現場で皆さんから出てくる言葉、アドリブを採用したのでしょうか。


内山:基本的には、ほぼ純度100%で脚本通りです。現場で脚本を修正することはあるのですが、アドリブを多く抽出する撮り方は僕自身があんまり好きではないんです。会話がリアルで日常的だと言ってもらえるのはありがたいのですが、セリフが日常会話として出てくるように、役者が徹底的にそのキャラクターになって蓄積させているんです。役者のみんなには、脚本を書いた僕よりもそのキャラクターに詳しくなるようにお願いしていて、僕にその役柄について聞くのではなく、逆に僕が教えてもらうくらいに、みんなに能動的になってもらいました。


Q:役者さんのやり取りが自然だったためか、カットもあまり割っていないように感じました。


内山:僕は『ヴァニタス』からずっと長回しでやっていたのですが、今回は挑戦の意味も込めて、撮影ではたくさんカットを割っているんです。ですが、カットを割った風には見せずに、なるべく自然に見えるようにすることも挑戦の一つだったので、カットを割ってないように見えているのであれば、それは嬉しいですね。




Q:役者さんたちが佇む場を作った美術、そしてそれを切り撮った撮影も、それぞれとても素晴らしかったです。スタッフィングはどのように決まったのでしょうか。


内山:基本的に僕がご一緒したいキャスト、スタッフは、わがまま言ってでも全部通させていただきました。キャストとスタッフ、ロケーションには心血を注いでいて、それで映画は大体決まるとさえ思っています。


四宮秀俊さんの撮影が以前から好きで、今回念願叶ってご一緒させていただきました。本作では、現在と過去で主に二つの時間軸があるのですが、例えばそれを色味で分けたりなどは、絶対にやらないようにしていました。二つの差別化としては、過去描写は全部手持ちで撮影して、現在のパートは基本三脚に乗せてしっかり撮影しています。これは撮影当初から決めていて、徹底して分けて撮影しました。四宮さんの手持ち撮影は、ここでぜひ活かしたいと思っていたんです。


美術の福島さんとは、King Gnu「The hole」MVを撮った時からのお付き合いで、それからの美術は、ほぼ全部福島さんにやってもらっています。僕が言う無理難題も全部打ち返してくれる人で、全幅の信頼を置いていますね。この映画をどう表現したいのか、どう見せたいのかということを踏まえて、美術に落とし込んでくれる方なので、福島さんの参加も絶対条件でした。もちろん今回も、美術は相当こだわって作りこんでもらっています。



Q:ロケーションもチャレンジングですよね。予告編にも映っていますが、新宿のド真ん中でもロケされています。新宿のシーンが出てくるのはほんの一瞬だし、どこで撮っても成立する気もしますが、そこをあえて撮影条件が相当厳しい新宿で撮っている。そういう一つ一つの積み重ねが、作品の奥深いものにし、クオリティをあげているのかと思いました。


内山:そうですね。あえて新宿で撮りました。新宿のあの場所で、このアングルで、こうパンして、ここで止まるって、僕の中ではそこまで決めていたので、絶対あの画は撮るつもりでしたね。四宮さんにも相当細かくお願いして、その画を見事完璧に撮りきってもらいました。


Q:内山監督はMVやCMでも活躍されていて、画作りには相当なこだわりがあるのかと思いますが、カメラマンとはいつもどのように話されているのでしょうか。


内山:現場でいきなり無理難題を言っても物理的に出来ないことがあることは承知してますので、いつも徹底的に準備してから撮影に臨みます。光の向きや使う機材、アングルや動き、等々、全てを自分の中に叩き込んでコンテ化した上で、現場で壊せるものはすべて壊そうとしています。作り込んだ画ほど面白くなくなってくることもあるので、ある意味「捨てる勇気」みたいなものは持とうとしています。準備をして臨むものと、現場で壊すもの、いつも両天秤にかけていますね。


Q:監督のそのスタンスを四宮さんはすべて受け止めてくれた上で、さらにアウトプットしてくれた感じだったのでしょうか。


内山:どうすれば欲しい画が撮れるのか、実現するための方法論を、お互いに提案しながら進めていきました。とにかく欲しい画を実現させるために、四宮さんをはじめとする撮影部や照明部の皆さんには、本当に頑張っていただきました。



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