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ロアルド・ダール作品をストップモーションと実写で映画化
ロアルド・ダールと言えば「チョコレート工場の秘密」をはじめ、昨年再映画化された「魔女がいっぱい」の原作でも知られる児童文学作家だが、その代表作のひとつ「お化け桃の冒険」を実写とストップモーション・アニメの組み合わせで映画化したのが『ジャイアント・ピーチ』。両親を亡くした少年ジェームスが、不思議な力で巨大化した桃と、その中で暮らしていた虫たちとともに、夢ば叶う街ニューヨークを目指す大変かわいらしいファンタジーである。
両親の死後、恐ろしい叔母さんたちに引き取られたジェームスは、食べ物もろくに与えられないひどい扱いを受けていたが、ある日謎の老人からもらった不思議な物体(老人曰くワニの舌)によって、枯れ木に桃をみのらせたことで暗い日々は一変。桃は見る見るうちに巨大化し、その中にはやはり大きくなった素敵な虫たちが。虫たちはストップモーション・アニメで描かれるのだが、そこにジェームスが加わると彼もまた実写の少年から人形へと変身するというアニメバートへの導入が美しく見事。
監督はディズニーのアニメーター出身のヘンリー・セリックで、ディズニー時代の同僚ティム・バートンとともに『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を世に送り出したあとで再び彼を製作に迎えて取り組んだ意欲作である。『ナイトメアー~』がバートンによる原案で、全体にバートン印が押されているのに対し、本作はセリックの作品という印象が強い。おしゃれな洋服を着た虫たちや、桃の中の小道具、途中で唐突に現れる機械のサメなども最高だが、陽気ながらもどこかに漂う暗さや、アニメパートを前後で挟んでいる実写パートとのバランスも絶妙だ。
擬人化され、かと言って必要以上にかわいくされてはいない虫たちの造形が素晴らしいが、金属の骨組みが入ったフィギュア的な人形と虫というモチーフの相性がいいらしく、細い手足がせかせかと細かく動くところなどとても虫らしい雰囲気が出ている。本連載では第17回「デヴィッド・シューリスの魅力的な影」でも紹介したシューリスが声を当てるミミズもよく出来ている。動きはどちらかと言えば尺取り虫に近いのだが、その質感がミミズそのもの。テントウムシもかわいいし、12本の腕が細かく動くムカデもおもしろいのだが、個人的なお気に入りはキリギリスとクモである。