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『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』吉本興業・神夏磯秀プロデューサーが語る、コロナ禍での映画製作、その新たな可能性【CINEMORE ACADEMY Vol.15】

『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』吉本興業・神夏磯秀プロデューサーが語る、コロナ禍での映画製作、その新たな可能性【CINEMORE ACADEMY Vol.15】

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コロナ禍でこそ広がった映画製作の可能性



Q:神夏磯さんは映画監督になりたくて吉本興業に入社されたそうですね。


神夏磯:そうですね(笑)。当時、吉本興業がナインティナイン岡村さん主演の『無問題』を作っていたので、それを見て、入社試験を受けました。学生の頃は本気で映画監督になりたいと思っていましたが、この業界に入ってすぐにプロの方々のモノづくりを肌で感じて、こりゃ無理だな、と早々に監督の夢は諦めました(笑)。そこからは、ジャンルを問わずにいろんなことを仕事のターゲットにできるプロデューサー業の面白さにハマって、今に至るという感じですね。


Q:だからこそ、コロナの中で何かを作ろうと思ったとき、映画が最初にきたのかなと。


神夏磯:それは本能的にあったのかもしれないですね。やっぱり映画館に足を運んで、リアル体験をして元気を出してほしいという。外出規制もあるとは思いますが、適切な形で劇場に来ていただいて、次の日からちょっぴり前向きで楽しい生活を送っていただきたいなと思っています。


Q:今は芸人さんの動画をYouTubeなどでタダで見られる環境が浸透しています。それに対し映画は劇場に足を運んで、お金を払わなければ見られないコンテンツです。本作でその違いを意識されたりしましたか。


神夏磯:確かに今回の作品を配信でお届けしてもよかったのかもしれないんですが、やっぱり映画館って本当に魔法の小屋というか、あの環境自体がテーマパークなんですね。没入体験という形で約2時間だけ普段のいろんなことをシャットアウトできる空間。そんな素敵な空間でお届けするには、それにふさわしい作品を作る義務がある。スマホやテレビで見るコンテンツとは違うものを作る必要がある。そんな想いから、映画館上映を前提にした、面白くて腕のあるクリエイターの方々やキャストの皆さんにお声がけをさせていただきました。


©「半径1メートルの君~上を向いて歩こう~」製作委員会


Q:クリエイターにとっても「映画なんだ」という意識はプラスに働いたんでしょうか。


神夏磯:キャストやクリエイターの方々には、「このコロナ禍でも負けずに映画作品を作るんだ」という想いに賛同をしてもらったことが大きかったと思ってますので、これが映画でなければ、この超突貫スケジュールでの超短距離走には参加してもらえなかったのではないかと思います(笑)。


Q:吉本興業は映画製作に積極的ですが、「お笑い」と「映画」はどんな関係性で考えていますか?


神夏磯:映画はいくつかある表現のフィールドの一つというイメージですね。テレビもあるし、デジタルプラットホームもあるし、SNS もある。そして何より吉本興業には直営劇場がある。そのうちのフィールドの一つが映画。それぞれの芸人さんがどのフィールドでコンテンツを出すのが一番その才能を発揮できるのか?というだけの違いかなと思います。


吉本興業には文章や物語を書ける芸人さんも沢山います。代表例で言うと、ピース又吉さんの小説「火花」。これは2016年にNetflixで連続ドラマ化し、2017年に劇場映画化しました。そういった才能を持つタレントさんがたくさんいるので、その才能をどう世に出していくか、どういう手順で出していくのか、生まれたIPをどうグルグル360度回していくか、っていうのを考えることが一番面白くてワクワクすることですね。


Q:コロナ禍の中で、映画も含めエンターテインメントをどういった形で成立させていくか、展望はありますか。


神夏磯:作るコンテンツの出し方をどうするか、その思考回路のチェンジが必要だと思います。コロナの中で気づいたのは、今こそコンテンツを世界に直接届けやすい環境になったのではないか、ということです。オフラインでのコンテンツ供給が一時は完全封鎖され、オンラインでないと作品が届けられない、となった時に、いよいよ世界中がオンライン上でひとつになったと思うんです。


そして、VRやAR、アバターやメタバース、そういった新しいデジタル技術があるのは知っていたんですけど、どこか本気では考えてなかった。ただ、いざオンラインでのコンテンツ出しに直面すると「こんな面白い技術がたくさんあったんだ、エンタメの新しい出し方ができるな」ということに気づきました。


今までは、まずは国内でどうコンテンツを作って届けるかっていうことを自然と考えてしまっていましたけど、今ならオンラインでアジアや欧米にいきなりコンテンツを出せてしまう。だからもう最初からグローバルに出すことを考えようよって思っている所はありますね。



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企画・プロデュース:神夏磯秀

吉本興業株式会社 コンテンツ事業本部・本部長

2001年、吉本興業株式会社に入社。島田紳助、ロンドンブーツ1号2号、タカアンドトシ、チュートリアル、等のマネジメントを担当後、2013年より映像制作セクションで番組プロデューサーを担当し、NTV「THE W」の企画や、NETFLIX「JIMMY」、AMAZON「戦闘車」、等のプロデュースを手がける。



取材・文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。




『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』

2021年2月26日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

企画・製作・配給:吉本興業  制作プロダクション:共同テレビジョン

©「半径1メートルの君~上を向いて歩こう~」製作委員会

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