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『野球少女』チェ・ユンテ監督 これは成長物語ではなく、ヒーロー映画なんです【Director’s Interview Vol.106】
チュ・スインとコーチは同一
Q:理解のある父親に、現実志向の母、と一見見せつつも、途中で父が逮捕されたり、母が娘の進路をきめ細かく世話したりと、決してステレオタイプに止まらない両親像も印象的でした。家族の描き方には貧困問題もはらんでいたと思いますが、そこに込めた意図などあれば教えてください。
ユンテ:貧困というより、経済的な困難を抱えているというのが正しいかと思います。誰でも経済的な困難はありますから、そのような家族を描くことによって、観客はチュ・スインの感情により共感できるだろうと思いました。また個人的には、相対的に疎外された人物に焦点を当てたいといつも思っています。
Q:プロを目指すチュ・スインの物語と並行して、人生をやり直そうとするコーチの姿も描かれます。その辺りの物語のバランスで気をつけたところなどはありますか?
ユンテ:物語上、コーチがチュ・スインをリードするような印象にならないように気をつけました。その点については、チュ・スインを演じたイ・ジュヨンさんともセリフをひとつひとつ相談しながら、バランスを取っていきました。
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また、私としては、チュ・スインとコーチは同一だという認識でした。つまり、チュ・スインは、そばにコーチのような人物がいないと、チュ・スインの未来も、コーチのようになってしまうと思っていたのです。
Q:野球の映画ですが、試合のシーンがほとんどなく、野球映画のセオリーを良い意味で色々と裏切っているなと感じました。なかなか思い切った構成だと思いますが、脚本段階で悩んだことなどはあったのでしょうか?
ユンテ:まず脚本段階で、どうしたら観客に楽しんで観てもらえるかについて悩みました。次にチュ・スインの感情を理解してもらうには、どうしたらいいかという悩みもありました。エンディングについてもどうするか難しかったですね。