気鋭の脚本家、俳優が集結し、全6話のシリーズとして配信されるHuluオリジナル『THE LIMIT』。そのタイトルが示す通り、「限定条件」をテーマとし、ワンシチュエーションで約30分のドラマを紡ぐチャレンジングなシリーズだ。限られた空間と最小のキャストで、観客をひきつけるストーリーをいかに生み出すのか…⁉︎ それはまさに脚本家の腕の見せどころだ。
本シリーズ第3話『ユニットバスの2人』、第5話『切れない電話』の脚本を担当したのはお笑いコンビ、かもめんたるの岩崎う大。「キングオブコント2013」で優勝し、2020年には「演劇界の芥川賞」とも言われる岸田戯曲賞にノミネート、今最も注目すべきクリエイターである。
岩崎が描き出す不穏な人物造形や、笑いの中に内在する恐怖表現の秘密、さらに映画とコントの意外な関係性を明らかにする。
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「リミット」=限定条件でドラマを紡ぐ難しさ
Q:完成した作品はご覧になりましたか?
岩崎:昨日初めて見て、2本とも面白かったですね。
Q:脚本家としても役者としても、納得の出来ですか?
岩崎:そうですね。本当にこの作品に関しては、前置きなしに映像を見始めて、「体験」をしてもらいたいですね。…「体験」をカギカッコで強調しといてください(笑)。
自分がその世界に入ったら抜け出せないと思って「体験」をしてもらえたら一番正しい楽しみ方かなと思います。
だから、僕の「かもめんたる」っていうコンビ名は邪魔なんじゃないかと思います(笑)。芸人が書いた、ということで不利にならなければいいなと。観た後に「やっぱりコントだった」って言う人がいそうじゃないですか。そういうのはちょっと嫌だなって思うので。ちゃんとドラマとして観て欲しいですね。
Q:脚本のルールとしては「リミット(ワンシチュエーション)」という縛りだけだった、とお聞きしましたが?
岩崎:そうです、「リミット」という縛りだけでしたね。コントでもよく「エレベーターに閉じ込められた2人」とかってありますが、「リミット」って設定としては強力なんですよね。ただ、面白い設定はやり尽くされているし、下手な「リミット」にすると諸刃の剣になる。
「リミット」っていう条件を聞いた時も、「気持ちは分かる(笑)!確かにリミットで面白い作品は面白いですもんね」っていう。ただ、今までの作品と違うものにするために、「リミット」にどういう余地があるのかな、と。
Q:かなり難しい条件だったんですね。
岩崎:これ是非書いといて欲しいんですけど(笑)「リミット」でロケ地も一か所だから回想シーンも入れられないですよね。
主人公が過去のことを思い出すことで謎が解ける、とか、そんな展開もできない。本当に演劇と一緒ですよね。でも演劇でも演出によって回想シーンは入れられますからね。脚本の条件としては本当にリミット中のリミットだったわけです。