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 「ジェットジャガー」ゴジラと共闘した電子ロボット【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.58】

「ジェットジャガー」ゴジラと共闘した電子ロボット【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.58】

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ジェットジャガーの可能性





 『ゴジラ対メガロ』の終盤では、巨大化したジェットジャガーがメガロに立ち向かうのだが、ここで海底人はメガロの応援として宇宙からサイボーグ怪獣ガイガンを呼び出す。一気にジェットジャガーは劣勢に追い込まれ、ちょっと見ていて悲しくなるくらい二体の怪獣から袋叩きにされてしまう。そこへようやく現れたのが、おそらく怪獣島からのっそりのっそりと歩いてやってきたゴジラである。ゴジラ登場で形勢は逆転、ガイガンは宇宙へ逃げ帰り、残ったメガロはジェットジャガーにおさえつけられて、ゴジラのドロップキックを喰らう始末。結局海底人は地上への攻撃を諦めるのであった。


 電子ロボットと怪獣王は固い握手を交わし、ジェットジャガーは元のサイズに縮むと先ほどまでのような強い自我はもう消えている。伊吹たちは再びジェットジャガーが巨大化する必要のない平和な世界を望んで映画は幕を下ろす。そういえばゴジラとメガロはタイトルから連想されるような一騎討ちをしていないなんてことも思い出すのだが……。


 あまりヒーローらしくないメガロへの攻撃はさておき、ジェットジャガーはゴジラと共闘したロボットとして大きな存在感を持っていると思う。これはゴジラを倒すために造られたメカゴジラとは全然異質な存在だ。ジェットジャガーもゴジラと同じように時代とともに少しずつ姿を変え、ほかの作品でも共闘する機会があってもよかったのではないかと感じる。もちろん、ジェットジャガーが今こうして持っている存在感は、たった一度きりの活躍しかなかったからこそなのかもしれないが。それでもゴジラと一緒に戦ったロボットという美味しいキャラクターが奥底にしまわれているままなのはちょっともったいない気がしてしまう。


 「S.P」はそんなジェットジャガー史を48年ぶりに初めて動かしたと言える。今回のジェットジャガーはゴジラと共闘するのではなく、真っ向から立ち向かうのだが、般若顔のロボットに新しい姿を与えたし、なんなら声さえももたらした。『メガロ』のジェットジャガーは一切しゃべることはないが、だからこそアニメでは釘宮理恵の声でしゃべるのがおもしろい。これを機に今後もジェットジャガーの解釈が重ねられていくといいなと思うし、ハリウッド版のジェットジャガーなんてのもどんな感じか妄想してしまう。きっとハリウッド版なら人間サイズからの巨大化が壮大なスケールとなることだろう。機械としても説得力のあるヴィジュアルになり、筋肉質のゴジラと肩を並べて戦う姿は大迫力間違いなし……なんて考えたりもするが、『メガロ』のオリジナルにあるようなどこかキッチュなヒーローっぽさがいちばん好きでもある。



イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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